ブロッコリーの抗ピロリ菌作用:スルフォラファンが腫瘍生成を阻害する


米国国立科学紀要誌に、ブロッコリーの抗ピロリ菌作用に関する興味深い論文が掲載されました。Faheyらによって、ブロッコリーやその新芽に含まれるスルフォラファンにピロリ菌を抑制する作用があること、そして動物実験では胃の腫瘍に生成を阻害する作用もあることが報告されたのです。

スルフォラファンという物質は、アブラナ科の野菜に含まれる辛味成分であるイソチオシアナートの一つです。ただし、スルフォラファンという形で含まれているわけではなく、グルクロニファンという不活性型のスルフォラファンが、ブロッコリー自身の持つ酵素で反応して活性化されるとされています。最近、スルフォラファンは解毒作用、抗腫瘍作用、抗酸化作用などで脚光を浴びています。

筑波大学の研究員らは、日本消化管学会において、動物実験によってスルフォラファンがマウスのピロリ菌を減少させ、ピロリ菌による胃炎の進行を抑制する効果がみられたこと、さらにはヒトの感染者でもピロリ菌の抑制効果や胃炎の改善が示唆されたことを発表しました。

これは、通常の食事で摂取可能な量であったために期待されましたが、ピロリ菌を抑制する機序はまだ解明されておらず、胃ではなくて腸内に流出した菌を減少させているのかもしれないので、まだ過剰な期待はしないほうがよいでしょう。

ブロッコリーは、ピロリ菌に対する作用以外にも、ビタミンA、ビタミンB1ビタミンB2、ビタミンCが豊富に含まれる緑色野菜であり、多くとってもカロリーなどは極めて低く、食品として優れています。しかし、鮮度が落ちると栄養素が減少すること、加熱すると不活性型スルフォラファンを活性型に変換する酵素が破壊されることなど、素材や料理法に注意が必要です。ゆでると水溶性のビタミン類は煮汁に溶けるので、加熱するなら蒸すほうがよいとされています。腸内細菌が不活性型スルフォラファンを活性型に変えてくれますが、腸内ピロリ菌に対する作用はまだ検討が必要です。