鼻疽 Glanders

 急性または慢性の化膿性ないし肉芽腫性病巣が皮膚、鼻粘膜に見られ、また全身感染、敗血症も起こす致命率の高い細菌感染症である。急性敗血症の型では2~4週の経過で死亡する。鼻炎型では口、鼻、喉頭、気管の粘膜に結節、膿瘍、潰瘍をつくり、膿汁を排出する。皮膚型では顔、腕、足などの皮下に結節、膿瘍を多発し、リンパ節、リンパ管に波及する。肺感染では肺膿瘍、肺炎、胸膜炎が起こる。このほか肝、脾に結節を形成し、また髄膜炎、関節炎なども見られる。鑑別診断では結核、類鼻疽、チフス、肺炎、丹毒などが重要である。動物、特にウマとの接触歴が参考になる。

 病原体は鼻疽菌Pseudomonas malleiで、類鼻疽菌と酷似するグラム陰性桿菌であるが運動性はない。

 鼻疽は主としてウマ属の疾病で鼻粘膜の急性~慢性化膿巣、肺の化膿性~肉芽腫性結節、肺炎、皮下組織、リンパ節、リンパ管の化膿あるいは潰瘍(皮疽)を特徴とする。まれにネコ科の動物、イヌなどにも見られる。動物の本病は現在世界的にも少なくなり、アジア、南米などごく一部でのみ知られている。日本では発生したことがない。

 ヒトの感染は感染動物との直接、間接の接触で皮膚、粘膜の傷からが多いと考えられているが、呼吸器、眼結膜の例も知られていて研究室感染が多い。

 診断は血清抗体の上昇、マレイン(遅延型)反応、菌分離などによる。モルモットを用いストラウス反応も見られる。治療にはサルファ剤、テトラサイクリンが有効で、ストレプトマイシンペニシリンは無効であるとされている。そのほかの抗菌薬については情報が乏しい。