肥大吸虫症 Fasciolopsiasis

 ヒト、ブタの小腸上部、特に十二指腸粘膜に寄生する大型の吸虫Fasciolopsis buskiの感染症で、アジア(インド、タイ、ベトナム、中国中南部)に分布する。日本には罹患者の移入例が見いだされている。糞便に出た虫卵は淡水中でミラシジウム(有毛幼虫)が発育、孵化して第1中間宿主ヒラマキガイに入り、その中で発育、増殖してセルカリア(幼虫)を産出する。セルカリアは菱の実、クワイ、蓮根などの水生植物に付着してメタセルカリアとなる。これを経口的に摂取して感染する。メタセルカリアは十二指腸で脱嚢して、小腸で2~7cmの成虫となる。小腸粘膜のびらん、出血、嘔吐、下痢、腹痛が起こり、多数寄生では重い消化器障害、貧血、腸閉塞、顔、下肢の浮腫、腹水、るいそうを呈し重篤になり、まれに死亡例もある。普通好酸球増多が見られる。検便により虫卵を検出して診断する。治療は鉤虫駆虫薬による。プラジカンテルも試みられる。予防は菱の実などの生食、生水の飲用、水浴をしないように衛生教育する。人糞を菱の栽培、養魚のために使用しないことなどである。イヌやブタも感染するので注意する。