骨悪性腫瘍の治療方針

 (1)治療方針

 骨悪性腫瘍は個々の腫瘍によって治療方針が異なるので、これをまとめて論ずることは適切でない。そこで、ここでは骨悪性腫瘍の代表として、もっとも頻度が高く悪性度も高い骨肉腫を中心に基本的な治療方針を述べる。

 診断が確定したらまず早期に薬物療法(化学療法)を開始する。一定のプロトコール(後述)に従って多剤併用療法を行う。2~3ヵ月の化学療法で腫瘍の縮小や限局化の認められた時点で外科的に腫瘍を切除する。かつては四肢の骨悪性腫瘍に対しては切断術を行うことが多かったが、現在では原則的には切断術を行わず、腫瘍を周囲の健常部を含めて切除する広範切除術を行って患肢を温存する。

 切除後の組織欠損部ぱ人工関節、あるいは自家骨移植、代用骨補填などの方法によって患肢の機能を再建する。術後も遠隔転移病巣の発現の防止、局所再発の防止を目的として化学療法を行う。化学療法の継続期間は、術前、術後を合わせて約1年間である。骨悪性腫瘍の遠隔転移は大部分は血行性に起こり、その出現臓器は80%以上が肺である。従って肺転移病巣の有無を厳重にチェックする。肺転移の出現を認めた場合には、胸部外科医と相談し可能ならば肺転移病巣を切除する。

 (2)化学療法の実際

 化学療法は一定のプロトコールに従って計画的に行う。腫瘍によって異なるが、ここには骨肉腫の例をあげる。使用される薬剤は、メソトレキセート(MTX)、アドリアマイシン(ADR)、シスプラチン(CDDP)が主薬であるが、補助薬としてビソクリスチソ(VCR)、ブレオマイシン(BLM)、シクロホスフアミド(CPM)、アクチノマイシンD (ACT D)を併用する多剤併用プロトコールである。1983年以降骨肉腫、 MFHに使用してきたTeikyo B-2プロトコールで、その主薬はCDDP、 MTX、ADRであり、補助薬はVCRである。