突発性発疹:小児バラ疹

 I 臨床的特徴                        、

 1.症状 本症の罹患年齢は通常2歳以下、大部分が1歳未満であり、特に5~12か月に多い。突然、高熱を発し、3~4日間持続した後分利的に下熱すると同時に発疹が出現する。約半数は生後初めての発熱であるとされる。発疹出現部位は体幹部が最も著名であるが、顔面、四肢にも見られるo発疹の性状は麻疹様の小紅丘疹のもの、風疹様の小紅斑で癒合の傾向を認めるものがあり、指圧によって退色する。発疹の持続期間は2~4日で出現した順序で消退する。色素沈着、掻痒感、落屑を見ない。発熱第1~2日ころ口蓋垂の根元の両側、口蓋弓の頂点の軟口蓋粘膜にケシ粒大から粟粒大の小顆粒を見るというが明確なものではない。患児は食欲不振、不機嫌が認められ、嘔吐や下痢を伴うものがあり、全身痙攣や髄膜刺激症状を示すものがある。合併症は一般に認められない。死亡例の報告はなく予後良好な疾患である。

 診断は、罹患年齢、突然の高熱が3~4日持続、発熱以外の所見に乏しい、抗菌薬が無効、下熱と同時に発疹が出現するなどから比較的容易である。

 鑑別すべき疾患の中で、突発陛発疹様発疹を呈する既知のウイルス疾患には、麻疹、風疹のはかに腸管系ウイルス感染症があるo特にエコーウイルス9、16、18、 25型感染症やコクサッキーウイルス5型感染症およびアデノウイルス感染症では類似の発疹を見ることがある。

 2.病原体 1988年(昭63)山西らの発見によるヒトヘルペスウイルス6 Human

 3.検査

 1)ウイルス分離 第3病日までの有熱期、発疹出現前の患児の血液より単核球を分離し、 105個の臍帯血単核球とphytohemagglutinin-P、 recombinat IL-2、 10%fetal calf serum加RPMI1640で2週間混合培養する。培養細胞中に巨細胞を認めたら、既知の突発性発疹患者回復期血清を用いて間接螢光抗体法により同定する。さらに生体内細胞親和性の研究によればHHV 6はCD4陽性T細胞に選択的親和性があることが示されているほか、 PCR法による抗原証明も行われる。

 2)血清診断 急性期、回復期のペア亶清に対し、 HHV-6を抗原とした螢光抗体法、中和試験、酵素抗体法などにより抗体の有意上昇を証明する。

 II 疫学的特徴

 1.発生状況 世界中に広く見られる疾患である。感染症サーベイランスの資料によると年間を通じて毎年発生している。夏にやや多い傾向があるのは、エンテロウイルスの流行による突発性発疹様発疹の発生が重なるためと思われる。HHV-6の発疹は季節差なく年間を通しほぼ均等に発生していると考えられる。罹患年齢は通常2歳以下で、離乳期乳児が多いとされる。経験的に顕性感染は約30%とされてきたが、最近の研究によれば、 HHV-6感染症の典型的病像が突発性発疹で、そのほか不顕性感染、不全型(発熱のみ、発疹のみ)の症例が確認されている。しかし、その頻度はまだ明らかでない。

 麻疹、水痘のような同胞罹患例や集団発生はほとんどない。

 HHV-6は潜伏持続感染することが知られたが、ほかの病像との関連は不明である。

 2.感染源 病原巣はヒトのみと思われる。感染源は単核球のほか血漿にもウイルスが含まれるが、そのほかは不明である。ほとんどのヒトは1歳を過ぎると、 HHV-6に対する抗体を保有していると判明した。

 3.伝播様式 感染源、感染経路はまだ解明されていない。好発季節がなく、罹患年齢、感染率から見て感染は出生時感染、もしくは胎内感染の可能性が高いと思われる。

 4.潜伏期 ウイルス発見以前は、経験的に8~14日、平均10日といわれたが、ウイルスが発見されても感染源、感染時期、伝播様式が解明されていないので、潜伏期は明らかでない。

 5.伝染期間 不明。

 6.ヒトの感受性 HHV-6はヒトに対して普遍的に感受性がある。一度罹患すれば潜伏感染が持続する。ヒトに対する感染率は極めて高く、受動免疫の消失する離乳期以後に発症するとも考えられる。

 Ⅲ 予防対策

 A 方針

 主として離乳期乳児が罹患するが予後良好であり、集団流行することがないので患者隔離や予防の必要はない。

 B 防疫

 1.届出 厚生省結核感染症サーベイランス事業の対象疾患であり、患者定点から届け出る。

 2.隔離 同胞発生、院内流行はなく、隔離の必要はない。

 3.予防 必要はない。

 C 国際的対策

 なし。

 D 治療方針

 特異療法はなく対症療法でよい。