ウイルス性肺炎

Ⅰ 臨床的特徴

 1.症状 徐々に発病することが多く、鼻汁、咳などの気道症状が数日前から見られる。家族内にも同様の症状がよく見られる。細菌性肺炎ほど高熱でなく持続期間も少なく数日程度であり、悪寒・倦怠感・関節痛なども軽い。咳は乾性、刺激性で痙攣性のこともあり、ときに嘔吐、睡眠障害を伴う。喀痰は少ない。呼吸障害は乳幼児では陥没呼吸として認められ、鼻翼呼吸を伴うこともある。胸部所見は軽度か欠如している。粗い気管支音や喘鳴を聴くこともある。遅れてラ音も聴かれる。

 胸部エックス線上、肺門周囲に淡いやわらかな陰影を認め間質性肺炎像、ときに肺葉性浸潤像を呈するが、1~2日後に病像の変化は少ない。病初年少児では肺の過膨脹がよく見られる。胸水貯留や気癌はほとんど認められない。

 肺病変の進行は遅く、1~2週で回復する。鑑別診断として肺炎マイコプラズマ肺炎、細菌性肺炎、まれにカリニ肺炎、過敏性肺臓炎がある。

 2.病原体 極めて多種のウイルスが関係しており、RSウイルス、パラインフルエンザウイルス1、 2、 3型、アデノウイルス4、 7、 21型、インフルエンザウイルスA、B型、コックサッキーウイルスA9、 B1型などがあり、まれにライノウイルスによることがある。麻疹、水痘一帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルスも挙げられている。

 RS、パラインフルエンザウイルスは乳幼児に多発する。特に重症化するものにインフルエンザ肺炎(乳児、老人)、アデノウイルス肺炎(乳幼児、青年)、麻疹肺炎(乳幼児)、サイトメガロウイルス肺炎(新生児、乳児、免疫不全患者)がある。

 3.検査 ウイルス分離、螢光抗体法による同定(咽頭ぬぐい液、喀痰など)、血清学的診断(急性呼吸器感染症参照)、細菌の二次感染もあり得るので同時に細菌学的検索も行うべきである。

 II 疫学的特徴

 化学療法時代に人づて細菌性肺炎は減少し、ウイルス性肺炎が目立ってきた。

 ウイルス性肺炎の診断には疫学的考察が必要である。ウイルスの種類や重症度は、年齢、性、季節、過密度、さらに血中抗体の有無、宿主の基礎疾患(免疫不全、心疾患、閉塞性肺疾患、糖尿病など)に左右される。インフルエンザや麻疹の流行の際、特に肺炎の合併には注意すべきである。年齢との関係は上述のとおりである。

 ウイルス性肺炎について正確な発生数は把握されていない。小児では細菌性肺炎の10倍くらいではないかと想定されている。

 Ⅲ 予防対策

 ウイルス性肺炎の予防に向けて麻疹、有効なインフルエンザワクチンの開発との普及がまず挙げられる。 WHOでは肺炎の原因ウイルスとして主要なRSウイルスおよびパラインフルエンザウイルスに対するワクチンの検討を進めている。重症例ではカンマグロブリンインターフェロンの応用も試みられる。抗菌薬は細菌の二次感染がなければ効果はない。