コミュニティ通訳による多言語サポート整備

実績調査によると「外国人住民のための相談事業」を求める声は、日本語教室の開設に次いで多いものでした。実績調査以前にはSICで情報収集提供事業の一環として職員が外国人住民からの様々な問い合わせにも応じていたほか、行政書士による無料相談が月1回行われていました。SICの本所と西部支所に外国語でも対応可能な相談員を1名ずつ配置して、外国人住民からの生活相談を直接受けるようにするとともに、市町村でも外国人住民からの相談に対応できる体制を整えるよう働きかけていくことになりました。

SICでの相談対応日時は月~金曜日の9時~17時で、コーディネーターの対応可能な言語と相談件数の実績も調査されました。英語と中国語以外の言語については翻訳士やボランティアの協力を得て対応しています。

この4年間でSICの相談窓口の認知度は高まりましたが、市町村における相談体制の整備は全くと言っていいほど進展がみられていません。それは、市町村側に「相談を受けたことがない→問題がない→必要ない」という発想があることや、わずかな数の外国人住民のための専用の相談窓口を尾子ことへのコスト意識が影響しています。また、SICが実施した頭部地域行政機関等相談担当者情報交換会でも指摘のあったように、通訳確保の難しさも障壁となっています。これに対する具体的な方策をSICが見いだせなかったことにも一因があるでしょう。

その一方で、外国人住民のための通訳ニーズは相談以外の分野にもあることがわかってきました。医療現場への動向通訳などの活動をしているボランティアグループなどが相次いで外国人住民を対象に医療と言葉の問題に関する調査を行い、ここからスキルとモラルを兼ね備えた通訳の必要性が浮かび上がってきたのです。また、教育現場からも外国籍児童生徒のために通訳を派遣してほしいとの声が聞かれるようになってきました。さらには、それに呼応するように、島根県が開催した在住外国人セミナーで、ビジネス通訳でも観光ガイド通訳でもない「コミュニティ通訳」という外国人住民の暮らしの様々な場面でサポートのできる通訳の必要性が高まってきていることが取り上げられました。

こうした流れを受け、SICでは相談業務を継続する一方でコミュニティ通訳の育成と通訳派遣システム構築に取り組むこととなりました。当面、医療健康福祉と教育の分野に焦点を絞った事業展開となりますが、実際にはコミュニティ通訳の活動範囲は非常に広く課題も多岐にわたります。将来的には外国人住民のそれぞれの暮らしの状況やニーズに応じて柔軟に対応できるようなシステムを整えていかなければなりません。