胞状奇胎の転帰と管理

 胞状奇胎の発生のところで、全胞状奇胎と部分胞状奇胎の発生が細胞遺伝学的に全く異なることを述べた。

 このことは、全胞状奇胎は絨毛癌のハイリスク病変であるが、部分胞状奇胎からの続発絨毛癌はみられない、といった臨床的にきわめて重要な事項と結びついている。

 全胞状奇胎の続発変化の頻度、すなわち侵入奇胎、転移性奇胎、存続絨毛症あるいは絨毛癌などの発生率は10~20%にも達するとされている。これに対して、部分胞状奇胎からの続発変化の発生率は5%以下であろうと考えられている。しかも、続発変化の中でも、絨毛癌だけに限っていえば、この疾患が絨毛癌の責任妊娠となることはまずあり得ない。


 胞状奇胎の診断がついたら、まずそれを除去することが治療の第一歩である。通常は約1週間の間隔を置いて、2回にわたって子宮内容の除去を行い、絨毛組織の遺残の回避につとめる。

 その後は、尿中のhCGを週に2回程度ずつ測定しながら、その値の推移を追跡する。

 2度目に子宮内容(絨毛組織)を除去してから、5週で1、OOOiu/ ℓ 、 8週で10iU/ℓ および12週でLHレベルの3点を結ぶ線を鑑別ラインとし、上記いずれの時点でもこのラインを下まわるものを経過順調型(1型)とし、いずれか一つ以上の時期でこのラインを上まわる場合を経過非順調型(II型)と判定する。

 1型のように、順調にhCGの値が低下してしまうものの予後は良好であると考えてよい。しかしU型を示す場合には、胞状奇胎の組織が子宮筋層に侵入した状態(侵入胞状奇胎)で遺残しているか、あるいはどこか別の臓器への転移があると考えて、この病巣の発見に努める必要がある。