2014-06-26から1日間の記事一覧

胞状奇胎の転帰と管理

胞状奇胎の発生のところで、全胞状奇胎と部分胞状奇胎の発生が細胞遺伝学的に全く異なることを述べた。 このことは、全胞状奇胎は絨毛癌のハイリスク病変であるが、部分胞状奇胎からの続発絨毛癌はみられない、といった臨床的にきわめて重要な事項と結びつい…

乳癌の病期別分布:穿刺吸引細胞診(needle biopsy)や切除生検

わが国における乳癌患者数は近年急速に増加しており、女性の癌死亡の中で第1位になることは確実視されている。欧米における乳癌発生数は例えば米国では1992年には女性の実に8人に1人がその生涯の間に乳癌になると報告されている。わが国ではそれほどでな…

腎癌:抗癌剤無効時にはfluorouracil系薬剤『UFT』が多少有効

腎癌は比較的少ない癌で全悪性腫瘍の1. 5%を占めるにすぎないが、最近増加の傾向にある。とくに超音波断層法、CTの発達により発見率も増加している。基本的には腺癌であるが、多彩な病理組織像を示す。原発巣摘出後転移が自然消滅する例が世界でわずかに報…

前立腺癌の治療:去勢術、LH-RHアナログ(ソラデックス、リュープリン)など

前立腺癌は高齢者に多く性ホルモン依存癌である。初期は無症状で、通常排尿困難や腰痛で発見されるので前立腺癌も半数以上が病期C以上の進行癌である。治療法は手術、放射線、ホルモン、化学療法の単独あるいは併用など年齢、合併症、病期、分化度などによ…

膀胱癌:表在癌、浸潤癌、CIS

膀胱癌は泌尿器科領域で最も多い癌で、初発症状は無症候性血尿である。表在性と浸潤性、さらに特殊な型としてCISに大別される。 ①表在癌:深部進展や転移がほとんどないので腿胱を温存するが、半数以上の症例で再発する。治療は経尿道的腫瘍切除(TUR - …

副腎癌:Mitotane(オペプリム)単剤および併用投与

副腎癌には副腎皮質癌のほかに髄質由来の悪性褐色細胞腫があげられるが、ここでは副腎皮質癌に対する薬物療法を中心とした治療の現状について述べる。 種々の薬物療法が著しい進歩をとげた今日でも、副腎皮質癌においてはいまだ有効な化学療法が確立されてい…

甲状腺癌の化学療法

甲状腺癌は発生頻度が低く、ほとんどの症例は手術療法で完治するので、化学療法が試みられる症例が限られてくる。従って世界的にみて、大規模なプロトコールスタディを行って、治療方法を比較して標準的治療を確立することに困難さがある。特に日本では個別…

甲状腺癌の局所療法とホルモン療法

全身性に投与する化学療法には限界があることから、腫瘍局所に抗癌剤を持続的に投与することによって治療効果を上昇させ、副作用を軽減できることを考慮した治療法が試験的に行われている。その一つが動注療法で、操作は上甲状腺動脈が分岐した末梢側からカ…

 骨・軟部腫瘍で薬物療法の対象となる腫瘍にはどのようなものがあるか

骨腫瘍としては、骨肉腫、軟骨肉腫、悪性線維性組織球腫(MFHと略記)、ユーイング肉腫、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫が主要なものである。これらのうち、軟骨肉腫は抗癌剤の有効性が低いので高悪性度のものを除いては薬物療法を行わず外科的治療を中心に治療…

骨悪性腫瘍治療の主薬:メソトレキセート(MTX)、アドリアマイシン(ADR)、シスプラチン(CDDP)が主薬

a. CDDP (Cis-diamine-dichloroplatinum、 Cisplatin、シスプラチン) 商品名:ブリプラチン(ブリストルマイヤーズ)、ランダ(日本化薬) プラチナの誘導体で、 2.5~3.0111g/ kg または100mg/㎡の動脈内あるいは静脈内に投与する。投与時に強い悪心…

悪性リンパ腫への単剤効果:アルキル化剤、代謝拮抗剤、植物アルカロイド、抗癌抗生物質など

悪性リンパ腫の組織型は,ホジキンリンパ腫(Hodgkin Lymphoma :HL)と非ホジキンリンパ腫(Non~Hod gkin Lymphoma : NHL)に2大別され,治療方法,化学療法の感受性,予後もやや異なっている。一般的にHLの方がNHLより化学療法に高感受性であり,…

急性骨髄性白血病(ANLL)の代表的薬剤:ダウノマイシン、ノバントロン、ナンラビン、ロイケリンなど

白血病とは血液幹細胞のあるレベルで異常が起きた細胞が,クローン性に増殖した状態で,その結果,正常血液細胞の増殖が抑制され,全身諸臓器に白血病細胞の増殖,浸潤をきたす疾患である。一般に症状は,正常造血の抑制による,貧血,感染,易出血症状と,…

成人リンパ性白血病,慢性骨髄性白血病,さらに再発後における骨髄移植療法の成績

慢性リンパ性白血病は欧米では頻度の高い疾患であるがわが国では比較的まれである。成熟小型リンパ球の増殖蓄積が本能と考えられており,B細胞由来のものがほとんどであるが、本邦ではT細胞由来のものも多く,この中には成人T細胞白血病の慢性型が含まれ…

多発性骨髄腫の治療:MP療法、M2プロトコール、CP療法、メルファラン超大量療法

多発性骨髄腫の治療は,他の悪性血液疾患と同様化学療法が中心になる。疼痛を伴うときは鎮痛剤を併用したり,局所放射線療法を行い,合併症が生じたときは各々の合併症に対する治療が必要になる。 1.アルキル化剤 多発性骨髄腫の化学療法にはアルキル化剤が…

急性白血病:標準危険群および高危険群の治療法

急性白血病にはリンパ性と骨髄性があり、リンパ性は小児白血病の約80%を占める。発熱、貧血、出血傾向、関節痛、全身倦怠感、リンパ節腫大などで発症し、骨髄穿刺により診断される。発病時の年齢、白血球数、染色体異常の有無、芽球の表面マーカーなどによ…

神経芽腫の治療;移植前の超大量化学療法(Hi-MEC療法)

治療は年齢と病期により異なる。腫瘍が局所に限局しているI期やII期でかっ本腫瘍に特徴的ながん遺伝子であるN一mycが増幅していない場合やマス・スクリーニングで発見される1歳未満例は比較的予後良好なため手術で腫瘍を摘出するだけか、それに短期間…

ウイルムス腫瘍:外科摘出術後の強力な化学療法や再発時の自家骨髄移植

初発症状は腹部腫瘤か腹部膨満が圧倒的で、腹痛や血尿および発熱を主訴にして発見されることもある。診断には腎盂尿管造影や超音波エコーおよびCTスキャンなどの画像診断が有用である。 本腫瘍は小児悪性腫瘍のうちでも最も治療成績が向上した腫瘍の1つで…

横紋筋肉腫:摘出前にvincristin、dactinomycin、 cyclophosphamide、 ifosfamide (Ifomide)等を投与

この腫瘍は痛みを伴わない、比較的弾力のある硬いしこりとして触れ、発生部位によりさまざまな症状を伴う。例えば眼窩に発生すれば眼球突出や眼瞼下垂、中耳では頑固な耳漏や耳鳴、鼻咽頭ではいびきや鼻汁、膀胱では頻尿、血尿、排尿障害、腟、子宮では帯下…

網膜芽腫の治療法:眼球摘出時に視神経断端や眼球周囲組織への浸潤の有無を確認

網膜芽腫は腫瘍が眼球内に限局している間に除去されれば予後は良好である。しかし、いったん眼球外に進展し、周囲組織や頭蓋内に転移した場合、その制圧は困難をきわめ、予後不良である。したがって、片眼性の場合は可及的速やかに眼球摘出を行い、腫瘍の根…

胚細胞腫:睾丸原発腫瘍、仙尾部原発腫瘍の治療法

発生部位は頭蓋内、頸部、縦隔、後腹膜、胃壁、仙尾部、腟、卵巣、睾丸などで、おもに身体の正中線上ないしは性腺に限局しており、横隔膜より上部では前方に、下部では後方に位置することが多い。好発年齢は縦隔および卵巣腫瘍は幼児、学童期から思春期にか…

悪性黒色腫(メラノーマ)の病期(stage)別治療指針

メラノーマは4病期に分かれ、それぞれ治療指針が異なっている。薬物療法は初回治療と再回治療とは異なり、患者の既治療歴によって考慮すべきである。 1. 病期Ⅰの治療この病気は初発病巣のみで腫瘍細胞の侵襲の浅いものである。Clarkのlevel 3(真皮乳頭層ま…

有棘細胞癌の病期別治療指針

皮膚悪性腫瘍の中、悪性黒色腫と並んで生命に危険を与える腫瘍であるが、進行は比較的ゆるやかで、初期の治療に失敗してもやり直しが可能であるということで比較的予後は良好である。しかし、一度臓器に転移が発生すると予後は否定的である。表皮の有棘細胞…

癌患者の服薬指導に必要な知識

ここ30年間,臨床に供された抗癌剤は50品目余りにのぼり,その適応も造血器腫瘍から固形癌へと拡がり,癌患者の延命率・治癒率向上へと大きく寄与してきた。種々の併用療法とその改良法の確立,並びに支持療法の薬剤の開発等によって,癌の薬物療法の選択肢は…

抗癌剤の薬物動態とTDM:テガフールとウラシルの併用や, CPAの腎毒性軽減のためのメスナ

抗癌剤は,有効量と中毒量の差が小さいため,厳密な投与量の調整が必要である。特に肝障害,腎障害等個々の患者の病態を考慮した投与計画には,吸収,代謝,排泄,血漿蛋白結合などの薬物動態を十分把握しておくことが不可欠であり,中でも各薬物の活性化の…

抗癌剤の副作用:骨髄抑制と悪心・嘔吐

副作用の発現は全身に及び,その多くがdose limiting factor (DLF)となるが,特に骨髄・消化管粘膜・毛母細胞など代謝回転の速い細胞ほど抗癌剤の影響を受け易い。以下,図2をもとに解説するように,あらかじめ各抗癌斉りの副作用の種類と,自覚症状の有…

癌性疼痛の管理:制吐剤塩酸グラニセトロン注射剤(カイトリル)

癌性疼痛は,通常,癌の進行に伴い増強し長期間持続するので,計画的な管理が必要である。広く用いられているWHOの癌疼痛治療指針の基本的な考え方を以下に示す。 1)鎮痛剤の選択…効力の弱いものから強いものへ段階的に行う。まずNSAIDs等を試み,効果…

がん告知を受けた患者への服薬指導法

患者が告知を受けている場合は,ほぽ他の疾患と同様に指導が進められると考えられるので,まず患者が告知を受けている場合について業務に沿って服薬指導を概説した後,患者が告知を受けていない場合への対応を考える。 患者が告知を受けている場合 1)患者…