なぜ低体重の赤ん坊が増えているのか


エンプティーな栄養しかとっていない若い女性にはスリム志向があって、体格指数が18.5未満という異常に痩せすぎの人が増えています。この痩せすぎの人でさえ、なお自分は肥っているからもっと痩せないといけないと思い込んでいるのです。今、日本で起こっているこうした異常な状態を、WHOも警告しています。

20代の女性を調べると、痩せすぎのBMI18.5未満の人が20%を超え、25%近くに増えています。この豊かな日本にあって、痩せすぎの女性が大変増えているということは、未来の日本人の健康を考えるときに大変問題があります。

こうした痩せすぎの女性たちの出産時に、不幸にして出産前に赤ん坊が亡くなったり、低体重で生まれたりするケースがあります。そのとき、どういうことが起こっているのでしょう。

きちんとした体重で満期に生まれる場合は、体の肝心要の臓器がきちんと発達しています。たとえば腎臓では、毛糸の玉のように毛細血管が玉状になった糸球体で、ナトリウムなどを含めた老廃物を濾して、尿にして排出するという機能があります。糸球体の数は胎児期の末期に増えて、最終的にきちんとした数をもって生まれてきます。しかし、低体重で糸球体が完成しないままで生まれてくると、糸球体の数も少なく血圧を上げるナトリウムをはじめ老廃物をうまく処理できなくなるのです。

また日本では糖尿病が増えていますが、欧米人とは違い、日本人には体質的に、血糖値を下げるインスリンというホルモンを十分出せない人が多いのです。その日本人がインスリンの分泌が多い欧米人が他の高脂肪食を食べているため、糖尿病が増えているのです。

特に低体重の出生児では、膵臓にあるランゲルハウス島のβ細胞というインスリンを出す細胞が完全に成熟する前に生まれてくるため、血糖値を下げる機能が十分に対応できないのです。その対応できないままの体質で糖分の多いものを食べますと、インスリンの分泌が追い付かなくなるのです。

こうしたことから、低体重の出生児は、将来、生活習慣病を起こしやすいのではないかと考えられます。事実、第二次世界大戦での疫学的な研究があります。それは、オランダの一つの川を挟んだある都市が、一方なナチの占領下にあって、一方は連合軍の支配下にありました。その時に出産した子供たちが、そのナチの占領下にあったところは、栄養が悪い状態、飢餓状態で生まれてきました。そして一方は連合国側で、出産のときの栄養はしっかりしていたのです。

約50年たって明らかになってきたことですが、同じ町に住みながらも、低体重児で生まれた子供たちはいわゆるメタボで、血圧や血糖値は上がりやすいし、肥満で心筋梗塞が早く起こっていのです。

このように母親の出産時の栄養状態が大変大事なのにもかかわらず、女性の栄養状況が少女のころから危機的になっています。

アボリジニ居留地では小麦粉とラードと塩と砂糖が配布され、それが妊婦の主食になって、子供は深刻な低栄養状態で生まれてきます。その子供たちが、成人になって、生活習慣病が多発しているのです。もともとアボリジニは倹約遺伝子というすぐれた遺伝子を持っていた上に、生下時の栄養環境が悪かったので、飽食の時代になり、食塩などを過剰に摂るようになると、血圧が上がり、糖尿病になったのです。これと同じことが豊かな国であるはずの日本の女性に起きているのです。