カスピ海ヨーグルトで免疫力アップ


ヨーグルトは、7~8世紀にトルコで生まれたといわれています。歴史のあるヨーグルトの中でも、恐らくコーカサス地方の「カスピ海ヨーグルト」は、常温で自家製できる最も古いヨーグルトではないかと思います。

実は一定の温度で作るヨーグルトは、家庭ではなかなかできにくいのです。カスピ海ヨーグルトの乳酸菌が日本で調査されたところ、それが独特の菌であることがわかりました。黒海の周辺でもブルガリアに広がっていて、日本にも入ってきている有名なブルガリアヨーグルトと比べてみると、その特色がはっきりします。

ブルガリアヨーグルトは、乳酸菌の中でも桿菌と呼ばれるこん棒状の菌です。ところが、カスピ海ヨーグルトは球菌で丸い形の菌です。桿菌と球菌との違いは、一つの菌がこん棒状であると一つずつ独立していますが、球菌はいくつかに分かれ、数珠状につながります。そうすると全体の表面積が圧倒的に大きくなります。大きな表面積であるため、表面で作られる粘性多糖体が非常に多いのです。いわゆるカスピ海ヨーグルト独特のネバネバ物質ができるのです。

この粘性多糖体には免疫力を高める効果があるといわれています。こうした効果を調べるためには、粘性多糖体が多いカスピ海ヨーグルトを摂っているグループと摂っていないグループとに分けて研究する必要があります。厳密に比較研究するには、プラセボ効果を見るために本物の全く区別のつかない食べ物を用意し、どちらが本物を食べているかわからない状況で摂る必要があります。

ですが実際に免疫力を高めるかどうかの効果を証明するのは非常に難しいのです。動物実験では、感染症を起こさせてヨーグルトを飲んでいると死ににくくなるとか、生存率がよいという研究ができるのですが、人間にそういう実験はできないのは言うまでもないでしょう。

その効果を確かめることができたのは、インフルエンザのワクチンを打つ機会でした。せっかくインフルエンザのワクチンを打っていたのに、お年寄りがインフルエンザにかかって肺炎で亡くなられたということがよくあります。これはお年寄りの免疫力が弱く、ワクチンを打っても抗体価が上がっていなかったためでした。抗体価が上がりにくいお年寄りや子供たちでは、そのワクチンを2回ぐらい打たないと、その効果がみられないということも多いのです。

そこで、子供たちとお年寄りのカスピ海ヨーグルトを摂ってもらうグループとそうでないヨーグルトに似た粘り気を付けたミルクを摂ってもらうグループで、ワクチンを打ったときに抗体を測定しました。

ワクチンを打ってから、抗体が上がっているかどうかを4週間後にみると、カスピ海ヨーグルトを摂っているグループでは、ワクチンに対する抗体価が上がりやすいということがわかりました。