大企業の医業経営コンサル事業への取り組み

コスト管理、データ管理、開業マーケティングなど得意の経営技術でサポート

 「病院経営意思決定支援システム」の販売をしているのは、総合電機メーカー大手の東芝の子会社である医用システム社・医用ソリューション推進部である。このシステムは大きく分けると以下の3本から構成されている。

①コスト管理(人件費、材料費、設備費など)

②収入管理(項目別診療報酬など)

③運営データ管理(平均在院日数、再入院率、紹介率)

 開業に際して全体像、診療科別、疾患別などに分けた上で、機能の類似した他の医療機関群との間でベンチマーク評価を行い、経営データの評価を出し、どのような対策を立てるべきかを開業とその後の参考にするというシステムである。

 この情報システムは、ベンチマーク評価を行うことで経営でつまずくことのないように備えることと、米・医療コンサルティング会社との提携で開発されていることを特徴とする。開発に携わったコンサルティング会社はグローバル・ヘルスーコンサルティング(GHC)で、ベンチマークの元データは、医療経済学者アキ吉川GHCチェアマンが行ったもの。

 このシステムを導入した場合、GHCが基本的な経営評価・分析の結果と、データの見方や活用法などについて医療機関側にコンサルテーションを行う。その際、当該医療機関からより詳細なコンサルテーションを求められれば、経営全般に関してはGHCが、IT導入や医療機器関連であれば東芝が別契約で行う。

 ゼネコン大手大林組は02年い11月に医療コンサルティング会社の日本経営と提携し、診療所の開業支援事業に乗り出した。この事業を担当しているのはプロパティマネジメント(不動産の管理・運営)事業部で、物件の斡旋から医院建設にかかわる予算、収支計画の作成から建設、運営までを行う。ただし、設計・施工については原則自社では行わない。

 開業希望の医師へのアプローチは、日本経営がオープンした電子カルテのショールーム「MED・IPlaza」(大林組が施工)の開業支援ブースを通じて行う。まず、開業を計画している医師に顧客登録してもらい、希望に洽っだ物件を探し、メールによる紹介という不動産仲介業から販促活動を始める。

 プロパティマネジメント事業部は、開業後にエネルギーコスト削減のためのコンサルティングも行っている。また、後述するが医療モールの企画・開発も手掛けている。

 一方、大林組と並ぶゼネコン大手の清水建設は、医療・介護施設建設の占める売上高比は約20%高く、もっとも得意とする建設分野だ。その清水建設事業化したのが、医療機関向け
のマーケット調査や、患者需要の簡易予測をする「ハイパー患者くん」という商品である。

 「ハイパー患者くん」は、人ロデータや受療率などを基本に、2025年までの診療科別・傷病分類別の患者需要を1辺500メートル~1キロのエリア単位で予測するものだ。もちろん、競合医療機関の存在を勘案した上で、診療科ごとの予想外来患者数などを時系列で弾き出す。

 ただし、診療圏が狭い診療所には使えない。

 また、システム上、医療機関の「患者吸引力」はベッド数を指標にして定めてあるため、競合の激しい都市部では精度は落ちるという。費用は条件にもよるが数十万円だ。より詳細な調査を求められる場合には、現地調査を行った上でさまざまなデータ分析を行う「患者マーケットリサーチ」がある。

 こうしたコンサル事業以外にも、水道・光熱費や施設・設備の維持管理のコストダウンを提案する「省エネルギー診断」。医療機関の代理人として外注事業者との折衝や管理を行い、アウトソーシング業務の質向上と効率化をめざす「総合マネジメント」。エネルギー設備や駐車場の保守・管理、イニシャルコストの軽減を口的にした「エコパック」(設備の一部を東京電力が所有し、病院は契約で使用量を払う仕組み)や手術室のリース・割賦などの活用を提案する「アウトソーシング」が、清水建設の手掛ける病院経営支援ビジネスだ。