毒素性ショック症候群 Toxic shock syndrome

ファージ1型の黄色ブドウ球菌の局所感染(はっきりしているのは膣タンポン使用による局所感染、敗血症など)に伴い、産生される毒素(トキシックショック毒素はその1つと考えられているが、非産生菌による発病も報告されている)により引き起こされる症候群と考えられている。

 急性の全身性疾患で、発熱(38.9℃以上)、発疹(び慢性斑状紅皮症、1~2週後の特に手掌・足底の落屑)、低血圧(成人で最高血圧90mmHg以下、16歳未満の小児では正常最高血圧の5パーセンタイル未満あるいは起立性失神)のほか、以下に挙げる多臓器障害を認める。消化器(嘔吐、腹痛、下痢)、筋肉(筋肉痛、血清CPK一正常の2倍を超える高値)、粘膜(口腔・咽頭、結膜、膣の充血)、腎臓(尿素窒素あるいは血清クレアチニン一正常の2倍を超える高値、あるいは、尿路感染症を伴わない白血球尿)、肝臓(総ビリルビン、血清GOT、 GPT一正常の2倍を超える高値)、造血器(血小板数10万/mm3以下)、中枢神経系(発熱・低血圧がない状態で、局所神経症状を伴わない見当識あるいは意識の低下)。

 黄色ブドウ球菌以外の敗血症、髄膜炎、咽頭炎レプトスピラ症などは否定されなければならない。鑑別診断すべき疾患としてほかに川崎病、しょう紅熱が挙げられる。

 米国では月経中の女性の膣タンポン使用に伴う本症が多発したが、タンポンの規制により減少した。しかし、小児、成人男性、月経とは無関係な女性の本症が散発的に発生している。

 わが国での発生頻度は低いが重篤で死の転帰をとる場合も多く、ショックを伴う全身性疾患の診療に当たっては本症を念頭に置くことが必要である。本症と診断されたら、心・血管系虚脱に対する適切な処置とクロキサシリンあるいは第一世代セファロスポリン剤の投与、メチシリン耐性菌にはバンコマイシンの投与が必要である。