胚細胞腫:睾丸原発腫瘍、仙尾部原発腫瘍の治療法


 発生部位は頭蓋内、頸部、縦隔、後腹膜、胃壁、仙尾部、腟、卵巣、睾丸などで、おもに身体の正中線上ないしは性腺に限局しており、横隔膜より上部では前方に、下部では後方に位置することが多い。好発年齢は縦隔および卵巣腫瘍は幼児、学童期から思春期にかけての比較的年長児に幅広く見られるのに対し、仙尾部、後腹膜、睾丸、頭頸部腫瘍はほとんどが3歳以下の乳幼児期に発生する。本腫瘍では血清中に胎児蛋白(AFP)や癌胎児抗原(CEA)、ヒト絨毛性生腺刺激ホルモン(HCG)などの上昇を伴うことが多く、腫瘍マーカーとなる。治療は組織型や病期、部位により異なる。睾丸原発腫瘍は大半が卵黄嚢癌で無痛性の片側腫大として比較的早期に発見されるため、外科的除睾術のみで予後は比較的良好である。しかし、卵巣原発腫瘍は発見が遅れがちで、茎捻転による腹痛や腹水貯留による腹部膨満を来してはじめて見つかることがある。また、仙尾部原発腫瘍も全摘出が困難なことが多く、化学療法を中心に治療が行われる。これら進行性卵黄嚢癌に対してはcisplatin+vinblastin (Exal、 Vinblastin) +bleomycin (Bleo)によるPVB療法が有効である。

 胚細胞腫とは外、中、内の三胚葉に分化しうる能力をもった胚細胞(生殖細胞)から発生する腫瘍の総称で、悪性奇形腫や精上皮厄胎児性癌、卵黄嚢癌、絨毛癌などが含まれる。