網膜芽腫の治療法:眼球摘出時に視神経断端や眼球周囲組織への浸潤の有無を確認


 網膜芽腫は腫瘍が眼球内に限局している間に除去されれば予後は良好である。しかし、いったん眼球外に進展し、周囲組織や頭蓋内に転移した場合、その制圧は困難をきわめ、予後不良である。したがって、片眼性の場合は可及的速やかに眼球摘出を行い、腫瘍の根絶を図る。両眼性の場合は進行した一眼をまず摘出し、比較的軽症な他眼は放射線照射や温熱化学療法による保存的治療を行い、視機能の温存を試みるが、手遅れにならないうちに摘出に踏み切ることも救命するためにはやむを得ない。

 眼球摘出時には視神経断端や眼球周囲組織への浸潤の有無を丹念に検索する必要がある。眼球外への微細転移が疑われる場合にはvincristin、 cyclophosphamide、 doxorubicinなどによる全身化学療法を約1年間続ける。

 網膜芽腫はおもに乳児の網膜に発生する悪性腫瘍で、片眼性と両眼性があり、全体の約70%は片眼・散発性である。両眼性はほとんどが家族内発生例で、第13番染色体の長腕にあるがん抑制遺伝子(RB遺伝子)の欠失に起因する常染色体性優先遺伝と考えられる。初発症状は白色瞳孔(猫目)が最も多く、斜視、緑内障、結膜充血、角膜混濁などにより発見されることもある。