横紋筋肉腫:摘出前にvincristin、dactinomycin、 cyclophosphamide、 ifosfamide (Ifomide)等を投与


 この腫瘍は痛みを伴わない、比較的弾力のある硬いしこりとして触れ、発生部位によりさまざまな症状を伴う。例えば眼窩に発生すれば眼球突出や眼瞼下垂、中耳では頑固な耳漏や耳鳴、鼻咽頭ではいびきや鼻汁、膀胱では頻尿、血尿、排尿障害、腟、子宮では帯下、性器出血などである。

 横紋筋肉腫はその原発部位により予後が異なる。眼窩原発は比較的早期に発見されやすく、また解剖学的に転移しにくいためその予後は比較的良好である。しかし、そのほかの部位に発生したものはいったん縮小しても再発しやすく、決して予後良好とはいえない。

 本腫瘍は境界が不明瞭で、肉眼的には正常と思われる部分にも浸潤していることが多く、ほとんどの例で全摘出は困難である。しかし、 vincristin、dactinomycin、 cyclophosphamide、 ifosfamide (Ifomide)等の抗癌剤によく反応するため治療ははじめから広範な全摘出を目指さず、まず化学療法により腫瘍の縮小を図った後に外科的摘出を行い、できるだけ機能を温存するように心がける。リンパ節や肺、骨、骨髄などに遠隔転移している場合にはcisplatinやdoxorubicinも加えた多剤併用化学療法に放射線照射も行い、さらに自家骨髄移植を用いた超大量化学療法も適応される。

 横紋筋肉腫は筋肉になるべき細胞(横紋筋芽細胞)ががん化したもので、この細胞は全身を分布しているため、体中いたるところから発生する。躯幹、四肢以外に眼窩、中耳、鼻咽頭、下顎、頸部などの頭頸部や膀胱、腟、子宮など泌尿・生殖器に好発し、全国で年間70~80名が発症していると推定される。男女に頻度の差はなく、乳幼児から年長児まで広く分布し、特に1~5歳に多くみられる。