ウイルムス腫瘍:外科摘出術後の強力な化学療法や再発時の自家骨髄移植


 初発症状は腹部腫瘤か腹部膨満が圧倒的で、腹痛や血尿および発熱を主訴にして発見されることもある。診断には腎盂尿管造影や超音波エコーおよびCTスキャンなどの画像診断が有用である。

 本腫瘍は小児悪性腫瘍のうちでも最も治療成績が向上した腫瘍の1つで90%以上の症例で治癒が期待できる。

 治療はまず外科摘出術が優先される。周囲組織に浸潤しやすい神経芽腫と違って、ほとんどのケ-スで全摘出が可能である。完全摘出された病期I、Ⅱでは術後にdactinomycin(Cosmegen)とvincristinによる化学療法を6~15ヵ月間加える。完全に腫瘍を摘出できなかった場合(病期Ⅲ)は腫瘍床への放射線照射も追加される。また、診断時すでに肺や骨など遠隔転移のみられるⅣ期や摘出標本の病理検査で予後不良組織群と判定された場合はdactinomycin+vincristinにdoxorubicin (Adriacin)も加えた強力な化学療法が行われ、寛解に到達しない場合や、再発例には自家骨髄移植も適応される。

 ウイルムス腫瘍はおもに5歳以下の乳幼児の腎臓に発生する悪性腫瘍である。無虹彩症や半身肥大症、巨舌、尿道下裂、半陰陽といった先天奇形との合併や、家族内発生のあることが古くから知られており、最近になってWT遺伝子というがん抑制遺伝子の欠損が発病と深く関係していることが明らかとなった。