予定外妊娠は堕胎と妊娠後期での産前ケア開始、およびアルコールや他の薬物など有害物質への胎児期曝露に関連

産前および産後ケア利用の予定外妊娠に関する受け止め方の影響
基本方針:
本試験の目的は妊娠と、妊娠後期の産前ケア実施中における堕胎の検討、および産後ケアの予約に関する感情の効果を調査することにある。
試験デザイン:
予定外妊娠が大部分を占める低所得の妊婦と分娩後女性の518人で構成される簡易サンプルを用いて、デトロイトの第3次診療所で記述的調査を実施した。そして、この結果の予測変数を特定するため、一連のカイ2乗解析とロジスティック回帰モデルを行った。
結果:
10代の女性においては、妊娠後期に産前ケアを開始する傾向が前期の場合に比べて1.8倍高く(p=0.05)、また、堕胎を検討した女性においては、妊娠後期に産前ケアを開始する傾向が3.7倍高かった(p=0.01)。堕胎を検討したが、精神的および道理的理由により拒否するという決定は、妊娠後期の産前ケア開始を予防するものであった(OR=0.23;P=0.01)。多胎妊娠は未確約の産後予約を示す唯一の予測因子であった。また、多胎妊婦が予約を取り付けない傾向は3倍高かった(P=0.05)。
結論:
産前ケアへの早期参加を向上させる上での成功は、予定外妊娠問題への取り組みに掛かっている。この課題に対処するためには、妊娠に関連した感情や価値観をヘルスケア提供者が評価する必要がある。妊娠についての女性の感情や価値観を理解することによって、意思決定や妊娠中の積極的な行動をヘルスケア提供者がより効果的に補助できるようになる。さらに、社会支援体制は妊娠中の行動に関わる決定を左右するものであるため、家族計画や産前および産後ケアの価値観に関する地域密着型の教育を行い、女性のパートナーや家族、または友人が参加する必要がある。
出産医療学雑誌 2000;20:513-519

背景
予定外妊娠は堕胎と妊娠後期での産前ケア開始、およびアルコールや他の薬物など有害物質への胎児期曝露と関連付けられている。また、予定外妊娠についての感情は、産後ケア利用に関わる決定とともに、堕胎に関わる決定に対して大きな影響力を有する。
以前の産前ケア利用パターンを見ることによって、女性が産後予約を継続する傾向にあるかどうかを予測できることもある。しかし、予定外妊娠と産後予約継続との関連性は不明である。分娩後の追跡期間中に来院することによって、短い次回妊娠間隔だけでなく、予定外妊娠の再発を防ぐための適切で効果的な受胎調節も確保できるため、産後ケアの予約を継続することは家族計画にとって特に重要である。
目的
本試験の目的は、大部分(82%)が予定外妊娠である低所得女性のサンプルにおいて、妊娠と妊娠後期の産前ケア実施中における堕胎の検討についての感情の効果、および産後予約が継続または取り損なわれているのかどうかを調査することにある。女性が望まなかった妊娠を『予定外妊娠』として区別している。試験目的には次のものが含まれる。
(1) 社会人口学と懐妊における受胎調節の利用、および妊娠についての感情と堕胎の検討を伴う妊娠の意図性の独立的相関を特定すること。
(2) 社会人口学、妊娠についての感情、堕胎の検討、懐妊時の受胎調節の利用、および妊娠後期の産前ケア開始と、取り付けられなかった産後予約の予測因子としての妊娠の意図性を調査すること。
方法
妊娠の時期と妊娠に対する初期反応、避妊法の過去および現在の使用、そして産前および産後ケアサービスの利用を評価するため、質問票を新たに作成した。標的集団の女性3人に対して研究チームが試験的に行った質問の草案をまとめるため、全米家族調査などのデータベースから得られた、産前ケアに関する既存の質問票における質問文を使用した。標的集団の83%がアフリカ系アメリカ人であるため、アフリカ系アメリカ人の研究助手を採用した。また、「デポプロベラ」を「デポ」、「経口避妊薬」を「受胎調節薬」と改めるなど、比較的小さな改訂を加えた。そして、治験審査委員会が準備および最終段階の質問票を承認した。
適格な試験参加者は、1996年11月から1997年11月の12ヶ月間において、英語を話せるメディケイド有資格者で、デトロイトの第3次診療所で妊娠32週間またはそれ以前に産前ケアに加入している女性で構成された。対象者に対しては産前診療現場において、その来院時のインタビューおよび産後のインタビューへの参加を呼び掛けた。妊娠32週間以内の対象者に対しては産前データ収集を目的に、産後48週間以内の者に対しては産後データ収集を目的にインタビューを行った。
インタビューでは対面式を取り、研究助手が質問文を読み上げ、それによる応答を自然な形で入念にチェックした。また、インフォームドコンセントではインタビュー方法の秘匿性と、対象者を不快にさせる質問には答える必要がないということを明確に説明した。いくつかの質問がセンシティブなものであったため、すべてのインタビューを産後ケア診療現場のプライベートな場所において1対1で行った。質問に関して話し合うことによってデータを収集することは、センシティブな質問への応答に対して悪影響を与えた可能性があるが、このデータ収集形式は調査研究のみに見られるものではない。質問票データを集めるための対面式インタビューは、全米家族調査などの国家的調査で用いられるものと同じ方法である。さらに、質問文を読み上げることによって、読解力の低い女性でも質問内容を理解できるようになる。

基準
産前ケアの開始を2分変数として測定した(早期の開始 対 後期の開始)。また、早期産前ケアを妊娠13週間以内の加入として定義した。この定義は産前ケアへの加入に関する「Healthy People 2010」の目標に基づいている。予定外妊娠の評価では「妊娠しようと努めましたか」という質問を行った。また、妊娠を望んでいなかった、つまり、その時に妊娠するつもりがなかった女性を予定外妊娠のカテゴリーに位置づけた。上述したように、質問内容は既存の質問票に基づくものであり、さらに全米家族調査などの全国的データベースから得られたものである。自身が妊娠していることを知った時にどのように感じたかを思い出させることによって、妊娠についての最初の感情を評価した。また、インタビュー時にどのように感じたかを尋ねることによって、妊娠に対する現在の感情を評価した。妊娠に関して、その時々の感情を評価するための質問への応答オプションには、「とても幸せ」、「幸せ」、「複雑」、「不幸」、「とても不幸」が含まれた。女性に対して堕胎検討の有無を質問し、堕胎を検討した女性に対しては、思い直した理由を述べるよう求めた。産後48週間までの女性にインタビューを行ったが、退院前にデポプロベラ投与を受けた女性を認めるため、試験参加者が分娩後12週間以内の産後ケア来院を継続しなかった場合には、産後予約が「取り付けられなかった」と見なした。

解析
試験目的は高比率(82%)の予定外妊娠を伴う低所得女性集団において、妊娠と妊娠後期の産前ケア開始時における堕胎検討、および未確約の産後予約についての感情の効果を探求することにある。年齢、出産回数、民族性、教育、婚姻状況、妊娠回数、職業、妊娠についての最初の感情、堕胎の検討、および産前ケア加入時における妊娠についての感情、および受胎調節の利用の試験変数や早期産前ケアと比較した後期産前ケアの結果変数との独立的相関を特定するため、カイ2乗解析を最初に用いて、質問票に記入した女性518人から得たデータを解析した。カイ2乗解析では試験変数と3つの主要独立変数(妊娠についての最初の感情、産前ケア加入時の妊娠についての感情、および堕胎の検討)との独立的相関も特定した。また、ロジスティック回帰では妊娠後期の産前ケア開始予測因子を特定するため、変数の交絡調節を行った。取り付けられなかった予約を対象としたカイ2乗解析とロジスティック回帰モデルでは、産後質問票に記入した女性319人から収集したデータを用いた。産前ケアが早期または後期のどちらで開始されたかに関しては、それを独立変数として求め、また、未確約の産後予約を結果変数とした。この方法によって、取り付けられなかった産後予約の関連性および予測因子の特定が可能となった。堕胎を検討したものの後に思い直したという女性を対象としたため、母性保健の専門家3人によるコンテンツ解析を実施した。
既存の産前ケアと望まなかった妊娠に関する資料に基づき、年齢と出産回数のカテゴリーを設けた。年齢のカテゴリーは「<20」と「20-35」、および「>35」であり、出産回数のカテゴリーは「0」と「1または2」、および「3またはそれ以上」である。

結果
産前インタビューを受けた女性の総数は518人で、そのうち319人が両方のインタビューを受けた。社会人口学的特徴、妊娠の意図性、または堕胎の検討に関しては2つのサンプル間で有意差がなかった。サンプル女性の大多数はアフリカ系アメリカ人(83%)で、年齢が20-35(71%)であり、未婚(82%)、無職(73%)、および12年以上の教育を受けていた(60%)。半数以上(55%)の女性が妊娠13週間以内にケア(早期産前ケア)に加入し、産後予約を継続中の97%の女性が分娩後12週間に産後予約を継続した。また、試験対象者の女性の82%が予定外妊娠であり、33%が堕胎を検討していた。表1では試験サンプルの社会人口学的特徴を示している。
産前ケアの開始
カイ2乗解析を用いることによって、3つの変数(年齢、妊娠についての最初の感情、および堕胎の検討)には産前ケア開始時期との間に関連性があることがわかった。35歳以上の女性(54%)とともに10代女性の大多数(55%)が妊娠後期に産前ケアを開始していた。また、20-35歳の女性の41%が妊娠後期に産前ケアを始めていた。堕胎を検討していた女性(60%)は堕胎を検討していなかった女性(40%)と比べて、妊娠後期にケアを開始する傾向が強かった。その上、妊娠について最初に複雑な感情(47%)や不幸な感情(60%)を覚えていた女性は、最初に幸せと感じていた女性(34%)と比べて、産前ケアを遅くにスタートさせる傾向が強かった。表2では試験変数と産前ケア開始間の有意な関連性を示している。

妊娠についての初期感情
いくつかの母性的特徴は、妊娠についての初期感情に関連していた。別居中、未亡人または離婚した女性の32%は、独身女性の25%および既婚女性の若干8%と同じように、妊娠について最初に不幸を感じていた(x2=24.7;df=4;p=0.001)。また、アフリカ系アメリカ人の25%は白人女性の17%とともに、妊娠について最初に不幸を感じていた(x2=14.2;df=4;p=0.007)。以前に3回以上出産していた女性では、出産経験のない女性、または1、2回の出産経験を有する女性よりも、妊娠に対して最初に不幸を感じる割合が高かった(x2=9.9;df=4;p=0.004;それぞれ32%、18%、および26%)。また、懐妊時に受胎調節を受けた女性では、受胎調節を受けていない女性と比べて、妊娠に不幸を感じる割合が高かった(x2=14.9;df=2;p=0.001;それぞれ35%、21%)。妊娠を望む女性は受胎調節を受けようとしないため、この結果は驚くべきものではない。妊娠について最初に複雑な思いや不幸を感じた女性は、幸福を感じた女性よりも堕胎を検討する傾向が強かった(x2=119.0;df=2;p=0.001;それぞれ42%、51%)。
妊娠について最初に不幸を感じることは、産後予約を取り付けないことにも関連していた(x2=4.0;df=1;p=0.046)。妊娠について最初に不幸を感じた女性の25%、および幸せを感じた女性の15%が、産後予約を取り付けなかった。妊娠しようと努めなかった女性は、妊娠についてネガティブな初期感情を報告する傾向が強かった*1。また、1、2回の出産経験を有する女性と比べて出産経験がない者では、産後予約を取り付けない傾向が見られた(13% 対 21%)。さらに、アフリカ系アメリカ人女性は白人女性よりも産後予約を継続する傾向があり(84% 対 15%;p=0.03)、これに関しては、同集団におけるアフリカ系アメリカ人女性が就業率で白人女性を上回ることに関連している可能性があった。
ロジスティック回帰を用いて潜在的な交絡因子を調整した後、取り付けられなかった産後予約の1つの予測因子を特定した。3回以上の分娩経験を有する女性では、産後予約を取り付けない傾向が3倍高かった(p=0.05;95% C.I. 1.03-9.01)。また、堕胎を一度は検討したものの、それを実行しないように精神的/道理的理由を示していた女性では、後期産前ケアに対する保護効果が見られた(p=0.02;95% C.I. 0.07-0.78)。堕胎を行わない上で、他の理由を報告していた女性は多くなかった。サンプルサイズが非常に小さかったため、赤ん坊を望んだ/心臓の鼓動のカテゴリーに対する回帰解析を省いた。表4ではロジスティック回帰解析の結果を示している。

取り付けられなかった産後予約の予測因子
産後予約を継続した女性とそれを取り付けなかった女性の間では、年齢や婚姻状況ならびに教育において有意差がなかった。また、試験変数のいくつかは未確約の産後予約と独立的に相関していた。就業中の女性と比べて失業中の女性は、産後予約を取り付けない傾向がかなり強かった(9% 対 20%;x2=5.8;df=1;p=0.016)。その上、1、2回の出産経験を有する女性と比べて出産経験がない者では、産後予約を取り付けない傾向が見られた(13% 対 21%)。アフリカ系アメリカ人女性は白人女性よりも産後予約を継続する傾向があり(84% 対 15%;p=0.03)、これに関しては、同集団におけるアフリカ系アメリカ人女性が就業率で白人女性を上回ることに関連している可能性があった。
ロジスティック回帰を用いて潜在的な交絡因子を調整した後、取り付けられなかった産後予約の1つの予測因子を特定した。3回以上の分娩経験を有する女性では、産後予約を取り付けない傾向が3倍高かった(p=0.05;95% C.I. 1.03-9.01)。統計的有意性が認められないが(p=0.05;95% C.I. 1.0-7.4)、潜在的に臨床的関連性がある変数は「失業中の状態」であった。失業中の女性が産後予約を取り付けない傾向は3倍強かった。後期産前ケア開始の予測因子のうち、産後予約継続を予測できるものはなかった。表5では、取り付けられなかった産後予約の予測因子特定において、ロジスティック回帰解析から得られた結果を示している。
考察
出産前にインタビューを受けた女性518人のうち、全員が出産後にもインタビューを受けたわけではなかったため、これによって本試験はその範囲が制限されている。妊娠についての感情や堕胎の検討、および産前ケア開始関連の受胎調節利用の解析では、出産前の質問票に記入したすべての女性518を対象とした。出産後の質問票に関連した解析においては、同質問票に記入した対象者が319人に限られた。また、懐妊時の受胎調節や妊娠についての初期感情を思い出すよう女性に求めたため、思い出しによるバイアスが生じた可能性があった。その他に留意すべき点としては、妊娠時の受胎調節利用に関して「はい/いいえ」の二者択一の質問を行ったことである。従って、受胎調節の誤用と失敗を識別することができず、さらに、対象者によるコンテンツカテゴリーの実証が不可能であった。この領域の専門家3人が答えを分類したが、中絶を行わないことに関しては、対象者にさまざまな理由があったという可能性が依然として残っている。

試験結果の適用範囲は制限されている。つまり、試験の参加者はその大半がアフリカ系アメリカ人、独身、無職、およびメディケイド有資格者であったため、試験結果の適用対象は同様の集団だけに限られてしまう。
以前には予定外妊娠を後期産前ケア、または産前ケア拒否のリスク要因として認識していたが、予定外妊娠の女性が選択の一つとして堕胎を検討すると考えることは不合理である。堕胎検討中の女性では後期に産前ケアを開始する危険性が顕著に高いということが、本試験によって明らかとなった。
堕胎の検討は産後予約の未確約を予測するものではなかった。予定外妊娠の維持を決定することは、それがいかなる理由によるものでも、産前ケアや産後予約取り付け継続などのポジティブな妊娠行動へ、気持ちを変化させる可能性がある。この概念を用いることによって、堕胎の検討は後期産前ケアの予測因子であるが、取り付けられなかった産後予約の予測因子ではないという理由の説明が可能となる。
堕胎に関わる意思決定を取り上げている既存の文献では、堕胎の決断を胎児、赤ん坊の父親、および妊娠女性の間で進行中の相関プロセスとして説明している。喫煙や予定外妊娠という母親の特徴は、初めての堕胎決断を予測するものとして認められ、さらに、堕胎の選択を繰り返す女性は母親を早くに失くしていたり、子供の時に母親から十分な愛情を受けていなかったりしたことが明らかとなった。相反する感情、悔み、そして満足を堕胎決断の要素として調査した結果、胎児との感情的関連性が、堕胎を取り巻く心理面の重要な要因として示された。堕胎の最終決定に関する文献は存在するものの、堕胎を行わない理由を調査した試験は確認されていない。その代わり、文献では堕胎の発生率や堕胎に関わる報告事例、そして堕胎後の心理的後遺症が報告されている。本試験の結果は、女性が堕胎に関して心変わりする理由や、妊娠継続の決定が妊娠後期と出産後のヘルスケア利用に対してどのように影響を与えるのかについて、それを解明するための最初の手掛かりを提供している。

本試験では堕胎を行わないことに関して、主に精神的/道理的理由に焦点を当てた。興味深いことに、精神的/道理的理由による妊娠継続には、後期産前ケアを防ぐ効果があった。実際に、精神的/道理的理由により堕胎を行わない女性の多くが、妊娠早期に産前ケアを開始していた。この結果は従来の著者が発表したものと同様であり、彼らは意図的、計画的、および待望の妊娠の概念を調査する定性試験を実施し、親子関係についての女性の基本的価値観に大きな重要性があるということを見出していた。これは妊娠の意図性の有無だけでなく、妊娠や親子関係に対する女性の態度にも目を配れるヘルスケア提供者の重要性を明らかにしている。
3回以上の出産経験は、同集団における後期産前ケアの予測因子ではなかったが、産後ケアへの不参加を予測できるものであった。多胎妊娠はさまざまな形でヘルスケア利用に影響を与えている可能性がある。第一に、複数回の分娩を過去に経験していることは、出産前後期間にすべきことを既に知っているのでケア提供者に会う必要がないという考えを女性に与えている可能性がある。また、それに関連した育児上の問題も考えられる。本試験の調査対象にも含まれる低所得者層では、移動や育児上の問題が産後ケアの利用に悪影響をもたらしていることがわかったため、これによって産後ケアへのアクセスが妨げられているのかもしれない。
潜在的な交絡因子調整後の取り付けられなかった産後予約に対して、無職は有意な予測因子ではなかったものの、取り付けられなかった産後予約に対して非常に強い独立的相関を示した。就業中の女性は明らかに、働くために何らかの形で育児を行っているため、彼女らにとっては、ヘルスケアへのアクセスに対する育児上の障壁が少ないのかもしれない。育児は本試験で評価されなかったものの、産後ケア利用のより正確な予測因子になり得る。出産前に通う診療所の大半では、産前および産後ケアの来院者に育児サービスを提供しておらず、その上、子供は受診予約の継続に励む母親に同行できるにもかかわらず、メディケイド専用バンでは子供の乗車人数が限られている。本試験の結果を踏まえると、現在の基準を改める必要があることがわかる。

後期産前ケアと産後ケア不参加の両方が関連因子を共有し、妊娠に関わるヘルスケアの利用に影響を与えていると考えられる。しかし、単一の変数(妊娠についての不幸な初期感情)は、後期産前ケアと未確約の産後ケア予約に対して独立的に関連しており、また、後期産前ケアと産後ケア不参加の予測因子は互いに異なっていた。堕胎検討と20歳未満という要素は、後期産前ケアを予測するものであり、その上、精神的/道理的理由による妊娠継続は、妊娠後期の産前ケア開始を防ぐものであった。これらの結果を踏まえると、妊娠について最初に不幸を感じていた女性は、堕胎を検討する傾向にあるものの、妊娠継続を決断することによって、産前ケアに関わる意思決定が別の段階へと導かれるようである。さらに、精神的/道理的理由に基づいて妊娠の継続が決定された際には、罪悪感や倫理的な悩みが、妊娠についての不幸な初期感情をくつがえし、妊娠後期の産前ケア開始を防ぐ可能性がある。
これらの要因のうち、産後ケア不参加を予測するものはなかった。産後予約は後の再参加可能および総合的なヘルスケアへの入り口を提供し、予定外妊娠の第1次予防を目的とした教育やカウンセリングにとって理想的である。取り付けられなかった産後予約の予測因子は多胎出産のみであった。この結果は産前および産後ケアの要求に関する価値観と意思決定要因が、互いに異なる可能性を示している。女性の意見、価値観、および産後ケアを取り巻く潜在的な障壁を理解するため、さらなる研究を実施する必要がある。
これらの結果は産前ケアへの早期加入促進と、産後予約継続の確保という責任を担うヘルスケア従事者にとっての課題を示している。従って、ヘルスケア提供者は妊娠の意図状況以上のものを調べる必要があり、さらに、予定外妊娠に対する意思決定および適応中の女性の大きな助けとなるために、妊娠と親子関係についての意見や価値観を評価しなければならない。その上、これらの領域における改善には男性パートナー、家族、そして友人の関与も必要になることがわかっている。出産後の来院は予定外妊娠の再発予防を助ける機会を与えるが、予定外妊娠の発生以前の問題に取り組む上では、家族計画や予定外妊娠のネガティブな面に関する、地域密着型の教育を拡充する必要がある。

*1:x2=82.5;df=2;p=0.001)。

堕胎の検討
堕胎を検討した女性関連の特徴には、婚姻状況や別居および未亡人、ならびに離婚歴(x2=6.43;df=2;p=0.004)、受胎調節なし(x2=9.38;df=1;p=0.002)、出産回数「1または2回 対 3回以上」(x2=7.6;df=2;p=0.002)、予定外妊娠(x2=20.2;df=1;p=0.001)、後期産前ケア(x2=13.3;df=1;p=0.001)、およびネガティブな初期感情(x2=119.1;df=2;p=0.001)が含まれた。堕胎を行わなかったことに関して、女性はさまざまな理由を述べた。コンテンツ解析から得られた5つのカテゴリーを次に示す:(1)女性が対応できない状況、(2)他の人々の影響、(3)精神的/道理的理由、(4)怠惰/消極、(5)赤ん坊を望んだ/心臓の鼓動を聞いた。
表3では堕胎を行わなかった理由について、各カテゴリーの応答数を列記している。堕胎を実行しなかった2つの理由は、産前ケアの利用と関連していた(x2=13.8;df=2;p=0.003)。精神的/道理的理由から堕胎を行わなかった女性は、妊娠後期よりも早期に産前ケアを受けることが多かった(61%)。驚くことに、精神的/道理的理由から堕胎を行わなかった女性は、他の理由で堕胎を行わなかった女性と比べて、より早く産前ケアを受ける傾向(51%)があった。
産前ケア加入時における妊娠への感情(現在の感情)
妊娠することへのネガティブな初期感情と初回インタビュー時のネガティブな感情(x2=89.2;df=4;p=0.001)、および堕胎の検討と現在の感情との間に、最も強い相関関係が見られた(x2=27.8;df=2;p=0.001)。妊娠について現時点で不幸を感じている女性の76%が、妊娠を知ったときにも不幸を感じ、また、現時点で複雑な感情を覚えている女性の48%が、妊娠について最初に不幸を感じていた。従って、妊娠へのネガティブまたは複雑な初期感情は、妊娠中に少なくとも一定期間は持続する傾向があった。
妊娠に関わる現時点でのネガティブな感情に関連する社会人口学的特徴は、ネガティブな初期感情に関連するものと同様であった(別居、未亡人、離婚 x2=12.0;df=4;p=0.017;3回以上の出産経験 x2=16.6;df=4;p=0.002;ネガティブな初期感情 x2=89.2;df=4;p=0.001;予定外妊娠 x2=6.8;df=2;p=0.033)。懐妊時受胎調節の利用、妊娠後期の産前ケア開始、そしてアフリカ系アメリカ人の民族性のそれぞれが、妊娠への不幸な初期感情に関連していたが、これらの変数は妊娠についての現時点の不幸な感情に関連していなかった。

後期産前ケアの予測因子
ロジスティック回帰では変数の交絡作用を調整し、後期産前ケアの3つの予測因子を特定した。10代の女性が産前ケアを妊娠後期に開始する傾向は1.75倍であった(p=0.05;95% C.I. 1.01-3.03)。また、堕胎を検討した女性では後期産前ケアの危険性が3.7倍高かった(p=0.01;95% C.I. 1.32-10.60)。堕胎を一度は検討したものの、それを実行しないように精神的/道理的理由を示していた女性では、後期産前ケアに対する保護効果が見られた(p=0.02;95% C.I. 0.07-0.78)。堕胎を行わない上で、他の理由を報告していた女性は多くなかった。サンプルサイズが非常に小さかったため、赤ん坊を望んだ/心臓の鼓動のカテゴリーに対する回帰解析を省いた。表4ではロジスティック回帰解析の結果を示している。
取り付けられなかった産後予約の予測因子
産後予約を継続した女性とそれを取り付けなかった女性の間では、年齢や婚姻状況ならびに教育において有意差がなかった。また、試験変数のいくつかは未確約の産後予約と独立的に相関していた。就業中の女性と比べて無職の女性は、産後予約を取り付けない傾向がかなり強かった(9% 対 20%;x2=5.8;df=1;p=0.016