チョコレートのう腫はなぜ癌化するのか


卵巣がんのうち、明細胞腺がんや類内膜腺がんの前がん病変として注目されているのが、「チョコレートのう腫」という病気です。日本人女性の15人に1人、不妊症の女性の3人に1人がかかっているといわれています。「チョコレートのう腫の患者さんを定期的に診ていったところ、急に卵巣が大きくなったため、手術をしたら卵巣がんが見つかった」こんな例が次々と報告されています。

チョコレート脳腫は子宮内膜症の一つで、子宮内膜組織が卵巣に入り込んで増殖したものです。月々の月経血が卵巣内にとどまっていき、それが古くなって溶けたチョコレートのような状態になることから、こう呼ばれます。

症状はほとんどありませんが、子宮内膜組織が増殖して卵巣が大きく膨らむと、破裂することもあります。こうなると激しい痛みに襲われます。また排卵や卵巣の可動性が妨害されたりすることから、不妊症の原因にもなっています。

このチョコレートのう腫がなぜがん化するのか。その過程についてはよくわかっていません。

閉経前後に卵巣がんになる人が多いということは、この時期に起こる女性ホルモンの変動がチョコレートのう腫に何らかの形で作用し、卵巣の内壁を構成する細胞の遺伝子異常を引き起こしているのではないかと考えられます。ただ、細胞ががん化する過程は複雑ですので、その過程で起こるメカニズムの全貌は、いまだ不明です。