中国の長寿地域「貴州省貴陽」について

中国の長寿地域の中に、貴州省の省政府所在地で貴陽という都市があります。ここの地域には苗族や布依族などの少数民族が多く暮らしています。中国の中でも非常に貧しい地域に入るのです。

ところが長寿が多いため、中国人もなぜここが長寿かわからないため、日本の研究チームが調査の依頼を受けました。しかし未開放地域で、その当時は解放されていない地域には外国人は入れなかったのです。

その理由は、この地域では家のうちに牛を一緒に買っているという生活をしている人々も多く、その生活が外国に報道されて、中国は大変不潔な生活をしていることが欧米で話題になったからです。

そういうところは外に一切見せたくないということで、研究チームは健診会場から一歩も出ることが許されませんでした。ただ24時間尿を集める健診ですから、それを集めに回らなければなりませんでした。そこで地域の人の生活を垣間見ることができたのです。日本でも牛や馬と一緒に生活していた時代は戦後まであるわけで、これを知って私は逆に親近感を抱きました。

貴州省の暮らしが貧しかったのはお米が十分採れなかったためです。その理由はその土地にありました。カルスト地形のため、山の肌が白いのです。石灰でできた山肌は景観にはたいへんいい。そこで育てているのはトウモロコシと大豆でした。

そこではトウモロコシと大豆を一緒に植えて、実に効率よく収穫していました。これも大変な知恵だと思います。トウモロコシと大豆をごっちゃに植えると、大豆は空中窒素を固定する根粒バクテリアをもっていますので、窒素肥料を化学肥料として加える必要がないのです。

また大豆を採ったあと、残りを全部土に戻してしまうと、それが肥やしになって、トウモロコシもよく育つのです。しかも収穫の時期に差があります。トウモロコシは丈が長く、大豆はその下の日かげのほうが育つ時期にはいいのです。大豆とトウモロコシを混栽して、主食にしているという地域だったのです。

ここは大豆の利用は徹底していて、あらゆる種類の大豆食を摂っています。日本でも大豆は、かなりいろいろなものを加工食として使っていますが、日本にはないものとして感心できるのは、プロセスチーズ状に固めた豆腐を麺のように切る豆腐麺というものです。また、そこには糸引き納豆まであります。日本人の発明とも考えられましたが、糸引き納豆もこの地域が源です。まさに大豆食文化の源流だったのです。