アメリカの要介護認定の方針や技術

アメリカではソーシャルワーカーが、彼らがもっている既存の援助実践への先入観や観念に高齢者を無理やり当てはめようとすることをやめて、援助者の考え方の前提や枠組みのほうを、高齢者個々に特有の福祉ニーズに合わせて修正しようとし始めたのは、ようやく1960年代頃からです。このような修正の行われた分野としては、要介護認定と介入の二つが挙げられます。
アメリカでは、他の社会福祉援助者(医師、社会福祉士、心理学者、看護師、理学療法士作業療法士など)は、高齢の利用者の要介護認定を行うにあたっての前提基準を修正することの重要性を理解し、その修正の結果として、要介護認定の方針や技術をそれに従って改良しました。一般的に、このような改良は、より包括的、全体的なものとなり、生物学的状態・健康状態の評価を含み、高齢者個々のその時点での案件に対処する介護だけではなく、高齢者の介護には、継続的に介護するという視点からの配慮が必要とされるという意味を持っています。
たとえば、老人病学、老人精神病学に携わる医師たちは、より包括的な生物学的・心理学的・社会学的病歴を知ることの必要性、高齢者の傾向や特色と家族支援の結果の評価の必要性を認めています。ここでいう健康状態とは、日常生活における身体的、精神的、社会的機能を含み、生活の質には、社会経済的または環境的要因を含み、健康状態には、身体的、精神的、社会的健康を含みます。
この分野の専門家は、要介護認定を実施するための実際のテスト用具を改良するとともに、標準化されていた要介護認定用の基準の中で多くの不適切なものを改良しました。また、面接者が要介護認定を行う際に果たすべき役割をさらに大きくしました。
たとえば、ヴォランズとレヴィは、ピクチャー・マッチング・テストについて、高齢の精神疾患者に適用する際の大きな欠点を発見し、改訂を求めました。そして彼らは、援助効果をあげるためのこの方法が、テスト業者が言うほどに効率的であるという証拠はないと結論付けています。同様に、グラニックは、高齢者の心理的測定とその評価は、以下に挙げる疾病の診断にも応用して使用し、役立てることが重要だと主張しています。精神・神経障害、心身症、循環器病、糖尿病、安静病、性的機能不全、胃潰瘍など。
高齢者の要介護認定について、もともと他の看護師などの社会福祉援助者によって実施されていた方法も、今ではソーシャルワーカーによって活用されています。例えば、生物学的・社会的経歴を含める点、認定方針や方法・用具の見直し、認定者の役割の見直しなどは、ソーシャルワーカーによって活用され、大きな成功を収めています。この分野の研究文献によると、以上の技術はソーシャルワーカーによって拡大され、さらに次のような分野も含まれるようになりました。
高齢者に適合した個人認定形式の開発。例えば介護認定実施に際し、高齢者の体力的な負担や、その時々の体調の変化を考慮するために、一回だけでなく、二~三回に分けて行う。
心理病理学的あるいは直接的な問題解決アプローチの範囲を超えた、認定の枠組みの使用。個人の能力の評価、パーソナリティの評価、薬物治療評価、家族または社会的支援ネットワークの評価、伝記的・生態環境的な面の考慮など。
認定の家庭で高齢者に見られる複合症状の原則の理解。ひとつの病気が、合併症など、下位システムと相互作用し、それがさらに他の症状下位システムに作用する、など。
より安全で正確な認定を行うために、重要な他者を直接、介護認定の過程に参加させる。
介護認定の過程で、社会福祉援助の原則、たとえば、自己決定の原則、;利用者の自立の原則の重要性を繰り返し説明すること。
高齢者の世話をしている、さまざまな種類の保健・福祉機関や、年金・介護保険などの制度に合致するように、介護認定手続きを修正する。
実際にソーシャルワーカーは、高齢者に対しての介護認定の方法を、高齢者の特性と福祉ニーズに基づいて修正しています。