医療廃棄物の処理問題

 基本的に医療廃棄物だけを処理する専門業者はおらず、その点では不法投棄の尻ぬぐいをしている医療機関側に苛立ちが目立つのが、医療を含む産業廃棄物の不法投棄問題だ。

 環境省が発表している産業廃棄物の不法投棄量で残存しているものは、04年3月末時点で2320件、約1267万トンという膨大なものだ。

 このうち5000トン以上の大規模不法投棄は285件、残存量約1144万トンで、大規模不法投棄のほとんどが処理されないまま残り続けるという実態が浮き彫りになっている。

 不法投棄を行った実行者を行政が特定しても、その弱腰に付け込み「処理資金がない」「知らぬ存ぜぬ」で開き直られるケースが多く、こうした場合に対処するために廃棄物処理法は肘年に改正された。

 改正内容は、不法投棄が発見された場合、ゴミを投棄した者ではなく委託した側、つまり仮に医療廃棄物だとすれば当該医療機関に、「現状回復義務・責任」(排出事業者責任)が発生することになった。

 だが、この改正もほとんど効果を発揮していない。その理由はゴミを委託する側は大手ゼネコンや大手電機メーカーなど一流会社ばかりで、そう言っては何だか、木っ端役人では歯が立たない相手が多いからだ。また、都道府県などの行政当局担当者は、長いものには巻かれろ式に、排出事業者責任をうやむやにしているという一面もある。

 ところが、医療機関は排出責任者という立場を理解しているという意味では優等生だ。毎年12月になると環境大臣名で産業廃棄物適正処理推進センター基金への拠出を求める文書が、経団連や医療界では「日本病院会」「全日本病院協会」「日本医療法人協会」などに回ってくる。内容は、不法投棄の除去のために事業者の立場から、社会的貢献をお願いしたいというのが主旨だ。

 医療廃棄物は極めて人命に直接的危険を伴うものが多く、かつ最悪ウィルスなどが蔓延する可能性もあり、多くが健全な業者によって適切に処理されている。その立場からすると、別次元の産業界から生じている不法投棄に、いつまでお金を出し続けなければならないかというジレンマが生じているのが医療関係者の本音だ。

 廃棄物の処理費用は診療報酬に入っておらず、すべて医療機関側の持ち出しで行われている。この費用に加えて、不法投棄行為の尻ぬぐいまでするのはゴメンだという思いが病院団体には根強い。何らかの次善策が早急に検討されなければならない。