「株式会社○○病院」が生まれた本当の理由

 株式会社が運営しているトヨタ系病院やJR系病院などは「株式病院」ではないが、競争原理、市場原理にさらされているこれら企業は、企業経営の手法を用いて病院運営をしている。言うならば「準株式病院」という位置付けだ。だから、病院ランキング本ではいつも上位にあり、患者からの評価は高い。こうした事実からも、株式病院の参入反対派が錦の御旗のように掲げる「儲け主義が患者の利益を損なう」という反対論は的外れだ。そればかりか、すでに医療機関は、企業にアウトソーシングしないと医療行為そのものが成り立だなくなっている。

 「株式病院」反対派の意見をもう一度整理、確認してみよう。

①「株式病院」は営利目的だから高収益な医療のみを行い、不採算な医療をやらない(例えば、産婦人科、小児科、救急医療など)

②部分解禁になっている混合診療(保険適用治療と適用外治療の並行治療)が全面解禁になれば、「株式病院」は混合医療を導入し、国民皆保険制度は崩れて、低所得者は高額医療を受けられず、高額所得者優遇な不平等な医療がまかり通る

③医療に市場・競争原理はなじまない

 ①については、株式病院でもない一部医療機関で、不採算な医療から逃げるという現象がすでに社会問題化している。少子化=顧客数の減少を見越して小児科医になり手がなかったり、医療過誤・事故による責任追及が厳しいという風潮のある産婦人科は、開業医の科目選択で避けられることが多い。

 また、医師法第19条によって医師は応召義務が課せられており、患者を選別することは違法行為だが、過去には救急患者のたらい回しなど応召義務違反が続発したことがある。それでも当該病院や医師が処分されたケースはほとんどない。

 ②については、株式病院や混合診療が本格導入される以前の問題として、保険料を納付できずに保険証を取り上げられる層があり、国民皆保険制度は実質崩壊している。

 ③については、医療機関同士の患者獲得競争はすでに始まっている。また、自由診療の分野では価格競争の火ぶたはすでに切られており、株式病院が皆無な状況で、医療界には競争原理、市場原理がすでに導入されている。

 その一方で、後述するが、医療に市場原理はなじまないのも事実だ。株式病院が誕生しないのは、企業が医療界および厚労省を恐れているのでなく、病院経営へのリスクを計算中というのが本当のところである。