「調剤薬局」が抱える諸問題

儲けの大きい調剤薬局商売を狙った参入で過当競争、生き残りサービス競争に突入

 医薬分業率が右肩上がりを続けていることから、業績も右肩上がりと思われている「調剤薬局」だが、薬局が手にする調剤料の計算には日本独特の「日数・剤数倍制」が用いられており、ここから生じる利益率の高さを狙って、これまで医療機関と深い関係にあった業者などが新たに薬局事業部を立ち上げて参入し、完全な過当競争時代に入っている。

 医薬分業の当初のメリットであった「早く正確に調剤する」ことは、調剤機器の進化で院内薬局でも可能になり、差別化の要素ではなくなった。むしろ、医療機関の人員削減に寄与するどころか、処方箋のチェックに新たな人員を配置しなければならないケースもあり、逆に「医薬内包」に戻る医療機関まで出ている。

 いまや薬局は、医療機関の。門前”に立っているだけでは立ち行かない時代になった。患者に対する新たなサービスに取り組み、他薬局との差別化を図ることで勝ち抜かなければならない。複数の医療機関から調剤される薬の組み合わせなどを管理する、「かかりつけ薬局」としてのアピールはもちろん、在庫不足から患者にクスリが渡らないというような不手際な薬局は淘汰されていく時代に入った。

 特定の医療機関からの処方箋需要だけでは生き残りが困難になってきたことから、最近は薬局の備蓄品目数は増加傾向にある。加えて薬の在庫がなかった場合、薬局間で融通するという方法も広く行われるようになった。

 都内で10薬局を展開する『アビック』では薬の在庫がなかった場合、インターネット上でグループ内の薬局の備蓄状況が見られるようなシステムを作っており、これを活用して他店舗から薬を調達している。そのほか、どの店にも薬がない場合などは、グループと無関係の薬局・薬店から融通してもらうことまで行うようになった。

 「政府によるGE(ジェネリック医薬品後発医薬品)の利用促進策や02年の診療報酬改定移行から備蓄負担は年々増しています。他店への小分けの依頼に応ずるというのは、本来儲けとは関係ないことなのですが、備蓄負担を少しでもなくすためにも薬局同士の助け合いは歓迎すべき事ですね」(都内調剤薬局チェーン)

 現在行われているサービス競争はざっとこんな具合だ。

①休日・夜間の対応

 24時間営業の薬局というのは極めてまれだが、多くの薬局でそれぞれ休日・夜間用のインターフォンを設置したり、薬局の電話から携帯電話への転送サービスを利用するなどして、緊急時に対応できるように備え、実質的な24時間体制を敷いている。

 また、地方などでは薬剤師会単位で、輪番制を敷き、休日・夜間専用の携帯電話を1台用意し、それを当番薬局の薬剤師が持ち回りで持つという仕組みをとっている場合もある。

②『一般名処方』への対応強化

 特許の切れた医薬品であるGE(ジェネリック医薬品後発医薬品)は、生産するメーカーが先発メーカーとは異なるために、その名称も先発医薬品と違う名前の場合がある。そこで02-年の診療報酬改定で処方箋料金の優遇処置が図られた際、『一般名処方』という名称で受け付ける薬局が増えた。

 ちなみに先発医薬品にするか、安価な後発医薬品を選ぶかは患者の自由裁量に任されているが、処方箋を書く医師はどちらかを尋ねることになっている。薬局でも一般名処方が出るようになってから両医薬品のデータとの価格を示した上で、どちらにするか選択してもらう場合がある。しかし、多くの患者は、「いまある医薬品でよい」という程度の回答が多く、医療機関、薬局側か神経を尖らせるほどGE問題はギリギリの選択ではなくなってきた。

 二般名処方の取扱件数が増え、説明に時間を掛けられないことから、GEを使用する場合には、この一般名ならこの商品、といった具合にI品目に取り決め、医師の了解を得た上で、その薬を投薬することにしています。この方が、医師もどの医薬品がどの患者に調剤されたかがわかり、また、医師とも疎通が図れるからです」(同)

③ドライブスルー方式

 リネンサプライ大手の『ワタキューセイモア』に吸収合併されたワタキューフジタ薬局(吸収前はフジタ薬局)は、同薬局『あいこく店』でクルマに乗つたまま処方薬が受け取れるドライブスルー薬局を開設した。

④医療機関へのコンサルタントのサービス提供

 総合医療の『総合メディカル』は、医療機関とのつながりが古くから多岐にわたっており、それだけに「そうごう薬局」を展開する場合にも、得意とするコンサルティング業務を付随させる付加的サービスを行っている。他の薬局チェーンとは一線を画しており、今後の展開力は脅威だ。

 厚労省は、医薬分業の狙いを「薬漬け医療」を改めることで、医療費の抑制を図ろうとしてきたが、利益が医療機関から薬局に移っただけの話で、保険調剤に支払われる保険金額は年々増加し、その効果が疑問視されるようになった。

 一方、医薬分業で効率化を図ったはずの医療機関には、身軽になり診療に集中できる、利益構造に変化が現れたという実感は薄い。

 薬局で今後行われるであろう各種サービスは、別掲扱いの健康保険外とし、基本的な調剤に関する健康保険支出を抑制すれば医療費の削減にはつなかっていくだろう。