真空調理には治療食向けのメリットも

 患者満足度の向上や経営効率化の観点から、病院の食事サービスのあり方を見直す動きも強まっている。院内の厨房で行う調理業務の外部委託はむろんのこと、病院外のセントラルキッチンでの院外調理が可能になったことや、前述した日清医療食品が始めた運びながら調理する「IT加熱カート」や「真空調理」(アンチオキシダントークッキング)など新技術の登場は、医食同源を考える医療機関側の選択肢を増やすと期待されているのである。

 「真空調理」を導入した病院ではさまざまなメリットが生じている。まず、チルド保存や冷凍保存と組み合わせることで調理作業の一部を前もって仕込むことができることから効率的なこと。次に、この調理方法は味が染みやすいため調味料が少量で済み、加熱による目減りが少なく、なおかつビタミンの損失も防げるという「治療食」向きの特性を備えていることだ。

 このため、調味料の制限がある人にも、少ない調味料で味の染み込んだ治療食が提供できるようになった。

 「真空調理」はフランスで考案され、バブル経済の最盛期に日本に入ってきた。当時人手不足が深刻だったホテルの厨房が真っ先に導入したが、それは、少人数で一定品質の食事を提供できるため、料理の質を落とさずに人員を削減できるのが最大のメリットだったからだ。

 「従来の調理法との比較では、同じ食材を用いて、『80HdG』(DNAダメージメーカー)で 調べると、真空調理での食事を摂った患者グループと、従来調理方法で食事を摂ったグループでは明らかに差が出ます。つまり、真空調理では活性酸素の活動が抑制されるのです。それは当たり前の話で、真空調理は酸素をカットしていますから元々活性酸素も含まれていないんです」(給食専門紙・記者)

 クックチルークックフリーズという調理法も、メディカル給食における技術革新を果たした。この調理法は食材を調理した後に急速冷凍し、食事時間の直前に再加熱して盛り付けることで、できたてにする調理方式だ。

 ちなみに、こうした病院食の1ヵ月のメニューの作成と栄養指導が管理栄養士における第一の仕事である。

 だが、病床数の多い病院が当日調理のクックサーブをする場合、厨房担当者が、調理終了後2時間以内の喫食を考えると、盛り付け・配膳に時間が掛がるため献立は限られ、メニューはマンネリ化しやすくなる。だからといって新しいメニューの開発などをすれば膨大な時間が掛かる。

 その点、セントラルキッチンでのクックチルークックフリーズでは、TT管理(食品の品質管理を科学的・技術的な裏付けをもって行うこと)により、できあがりの均一化を図ることができるようになった。