なぜ中古医療機器市場が伸びているのか

高価な医療機器は「まずは中古から勧める」のがメーカー営業の実際

 中古医療機器の業界構造は中古車市場と同じである。自動車メーカー系ディーラーでも新車と中古車を扱うように、医療機器メーカーも子会社などで自社の中古医療機器を扱う。その一方で、中古車専門業者が存在しているように、中古医療機器専門業者が存在している。中古医療機器業者は、医療周辺ビジネスとしては比較的新しいアウトソーシング業者だ。

 現在の市場規模は新品医療機器の出荷額の5%程度に当たる約1000億円だが、自動車市場と同じように新品が普及すればするほど市場規模は拡大する。また、医療費削減、医療機関経営のコスト削減に伴い飛躍的に伸びると考えられている。

 つまり、中古医療機器市場が伸びている理由の第一は「価格が安い」ということに尽きるわけだ。

 このため、国内の医療機器メーカーは中古品の流通に対して「新品が売れなくなる」と敵視せざるを得ないが、やはり中古車市場と同じように一部メーカーで中古品を扱うという動きも出てきている。

 「医療機器は高価なだけではなく、購入費用を短期間のうちに回収するのは難しい。そのため正常に作動するなら中古品でも十分で、何も新品である必要はありません。中古医療機器のコストパフォーマンスは非常に高いと思います。医療機関が機器購入を考える際には、まず中古から検討するように勧めています」(医療コンサルタント

 これまで中古品は医療機器の販売代理店が担当者レベルで販売する程度だったが、90年代後半からニーズが高まり、中古医療機器だけを専門に扱う販売業者が増えてきた。だが、こうした一方で中古市場=ブラックマーケットというイメージで見る開業医なども多かった。

 どこから仕入れたのかわからないためにジャンク晶だったら? という不安や、適正価格なのかどうかを見極める術がなかったからだ。それはつまり、中古医療機器の流通ルートが不透明だったからだが、インターネットの普及でこうした不安はかなり払拭された。

 現在は流通も整い価格などの情報がオープンになり、安心して中古医療機器を買える環境が整うにつれ専業業者も多くなった。専業大手と言われるのは『システムトレード』(岡山県岡山市)、テイクオフ(東京都)、フランチャイズリンク(大阪府堺市)、メディクスト(東京都)の4社だ。

 ただ中古で販売されるのはエコーや内視鏡などの検査機器が多く、CTスキャンやMRIといった最新医療機器の中古品は難しい。ほかに流通が多いのが手術台や薬品棚、メスやピンセットなどの医療小物品だ。

 中古市場が拡大している第二の理由は、「医療機関の経営見直しが盛ん」になっているという背景から需要が後押しされていることによる。バブル崩壊後、開業コストを抑えるために中古医療機器を活用する開業医が増え、そこから中小医療機関、さらに大規模医療機関へと広かっていった。

 第三の理由は「インターネットの普及」である。中古専門会社や販売代理店、医療機器リースなどの情報は逐次流されており、30~40代の若い開業医はホームページを見て問い合わせるケースが増大している。

 「ホームページ上で中古医療機器の価格や写真を掲載している業者は多く、医師が他社と比較すれば相場がわかり、欲しい機器がお買い得かどうかも読める。業者の中には中古専門のショールームを開いていて、そこで実際に見て買ったという友人もいますよ」(都内の開業医)

 医療機器もクルマなどと同じように扱われるようになっているが、クルマほど汎用品ではないだけに特有の問題も横たわっている。