看護師人材サービスを利用するメリット、デメリット

 医療機関によっては、「誰でもいいからとにかく看護師を派遣して欲しい」という切実な訴えをするところもあるようだ。それほど深刻な看護師不足も、実はさまざまな要因から偏在しているのが実情である。この偏在を是正すると期待されるのが派遣サービス会社である。看護師は現在でも圧倒的に女性が多いために子育てなどで離職するケースが多いが、育児が一段落した看護師が不況で苦しくなった家計を補おうと職場復帰を考える例が増えている。その復帰の手段として派遣サービス会社を使う看護師が多くなった。

 一方、医療機関が派遣サービス会社に「派遣」や「紹介」を委託することで生じるメリットは経営の効率化である。例えば、外来に非常勤スタッフを配置できれば、それまで外来担当だった正職員看護師を病棟に回すことができ、看護師の再配分を適正化できる。

 「法改正」により大学病院など有名病院でも派遣看護師の受け入れが可能になった。看護師にとっても派遣先の条件として、①知名度、②ロコミによる評判、③専門性を生かせるか、が重要なポイントだが、大学病院ならば、①の条件は申し分ない。

 実は派遣サービス会社への派遣依頼を行うのは医療機関とは限らない。企業からの派遣要請が増大しているという。ISOのコンサルタント会社や治験コ上アイネーターとして採用した いという治験施設支援会社、成人用オムツメーカーなど、これまで看護職とは無縁と思われるような企業まで看護師求人が広がり、看護職類という国家資格の活躍の場は広がりを見せている。ただ、成長過程にある派遣サービス会社の中には、人材不足を逆手に取ったいい加減な業者も中には存在する。医師、看護師の架空履歴書を提供して、資料提供代金を請求するケースだ。こうした悪徳業者への対抗措置として、複数の派遣サービス会社に資料請求やサービス内容の詳細の問い合わせをする医療機関は多い。優良な派遣サービス会社では、医療機関側の懸念を払拭するために、求職者の履歴書の閲覧を自由に行えるようにしたり、希望すれば面接できるようなシステムを採用するところもあるようだ。

 「1回くらいの閲覧ではなかなか人柄や実際の診療技術の水準までは把握できません。ただ、かつては確かに『問題医師』の登録が多かった。だから、業者を通じての派遣や紹介には二の足を踏みましたが、最近では純粋によりよい職場を求めた、やる気のある医師の登録が増えていることは認めます」(都内中堅病院・事務長)

 とはいうものの、登録している医師の質は依然として玉石混交のため、なるべく多くの登録者の情報を取り寄せ、各々を比べるなどの対策を立てている医療機関は多い。そこで紹介する派遣サービス会社としては、より多くの正確な情報を提供できるようなシステムをあの手この手で考えているようだ。紹介業者にしてみれば、一度信用されれば、次回からも継続して要請する医療機関は多く、最初が肝心だからだ。いずれにしても、法改正からまだ日が浅く、派遣サービス会社も試行錯誤を繰り返しながら信頼を勝ち取る努力を続けなければならない。