医師のアルバイト化

ネットでの医師紹介ビジネスは医師のミスマッチを埋めるビジネス

これまで医師の派遣サービス会社への求人というと、アルバイトがほとんどだったが、的な傾向として、常勤医での勤務希望が多くなっているのが、現在の医師流動化現象における大きな特徴である。医師派遣サービス業のひとつ『キャリアブレイン』では、これまでに見られなかった30代、40代の若い医師の登録が増えているという。派遣サービス会社へのアクセス方法も多様化している。当直医不足に悩む病院、一方で当直などのアルバイトを希望する医師…。双方をネットで結び付けるビジネスが医師が比較的充足している首都圏でも広かっている。

 当直医不足の一因には、その医療機関の関連大学の「医局」から派遣されるのが一般的だったが、前述したように、04年度から医局の研修医に臨床研修が必要になり、大学の医局もアルバイト医師を派遣する余裕がなくなった。

 こうした雇いたい病院と、働きたい医師をネットで結び付けるビジネスを思い付いたのがアルバイト医師探しのサイト「メディカルリサーチアンドテクノロジー」(MRT)だ。

 MRTは病院側から求人広告料を払ってもらい、ネット上に求人情報を掲載するというシステムだ。登録している医師がそれを見て求職すると、MRTが面接後人選をし病院に紹介する。

 ニセ医者防止のために、医師の資格は医師免許状の写しで確認するほか、面接でチェック、 あるいは出身大学に照会するという手法を取っている。先に8年もの間、ニセ医者を続けた医師法違反事件が露見したが、出身大学に照会さえしていればすぐに正体などわかることだった。ニセ医者は男だったが、その「医籍登録番号」は女医のものだったからだ。

 MRTに登録している医師は首都圏在住の20代から30代を中心にした約2000人。中心層は大学病院系の勤務医で、勤務医の低い給与をアルバイトで補いたいというのが主な動機だ。登録医療機関は約1000で求人と契約は年々増加し、昨年は紹介数が1万6000件に達した。求人広告料は年間20万円。紹介手数料は非常勤医師の場合で総支給額の10%となっている。

 「医師のための当直情報サイト」をウリにしているのは「当直ナビ」である。このグループは紹介はせず、ネット上の求人広告を見て医師が直接医療機関に申し込むという手法を採っている。登録医師は約500人、医療機関は関東地方の30施設だ。

 医師紹介会社メディカループリンシプル社が運営する「民間医局」は、手数料を病院から取る。最近は慢性的な麻酔医不足から、麻酔医の需要が多いという。麻酔科の分野では病院の勤務医、開業医など約700人が登録。これまでに国立病院機構、公立病院、大学病院など約70施設へ派遣実績がある。こうした「アルバイト医紹介ビジネス」が普及している背景には、やはり臨床研修の必須化という医学界の流れがある。この制度の導入によって、原則2年間、研修医は医局に籍を置かないために、人手不足になった医局が関連派遣病院から医師を引き揚げるケースもあり、医師を取られた格好の医療機関では人手不足に陥るという弊害が出ていた。ネット紹介ビジネスは、こうした医師のミスマッチを埋めるビジネスだ。