予防接種法改正の要点

 予防接種法及び結核予防法の一部改正は、 1994年(平成6年)6月29日法律第51号をもって公布され、同年10月1日に施行されることになった。また、予防接種法施行令及び結核予防法施行令の一部を改正する政令と予防接種法施行規則の一部を改正する省令が同年8月17日をもって公布され、いずれも10月1日に施行される運びとなった。そして8月25日付で、厚生事務次官および厚生省保健医療局長の通知が出され、これからの予防接種実施の細目が提示された。

 今回の改正の要点は次のとおりである。

 ① 法による強制・義務接種から国民の努力義務(勧奨接種)になる。

 実施主体(市町村)や予算の出し方などは従来どおり。

 ② 健康被害救済制度はこれまでどおり行われる。被害者救済は手厚くする。

 従来の健康被害者の重症例は重症心身障害児(者)の状態の者が多く、親の高齢化、介護が大変であること、などを考慮し、年金額の増額、介護手当の新設により救済をF厚くする。両者を合わせて、従来の年金額の2倍近くになる。

 ③ 勧奨する予防接種(定期接種・救済制度の対象)は以下の8種類。

 百日咳、ジフテリア、ポリオ、麻疹、風疹、日本脳炎破傷風、 BCG

 対象疾患流行のおそれのない地域があれば、知事の指定で行わなくてもよい。実際には北海道における日本脳炎が該当しよう。

 平常時の臨時予防接種はなくなり、緊急時の臨時予防接種は必要の生じた時に対処する。

 ④ 予防接種を行ってはならない者を的確に識別するため予診の充実を図る。

 医師が事前に十分予診を行い、予防接種を行ってはならない者を的確に識別、除外するため予診の充実を図る。禁忌という表現はやめ、本来の禁忌に該当すべき「定期の予防接種の対象とならない者(行ってはならない者)]を予防接種法施行令(政令)に基づいて厚生省令(施行規則)で定める。また、接種に当たって注意を要する者は、予防接種実施要領(保健医療局長通知)の中で定められている。

 ⑤ 情報の徹底に努める。

 医師・担当者への情報、被接種者や保護者への健康教育の充実により、予防接種の必要性、まれながら起こり得る健康被害の症状や頻度なども周知させる(インフォームドコンセント)。接種率の向上に努める。

 このため、医師・接種担当者向けには「予防接種ガイドライン」、親向けには「予防接種と子どもの健康」、というパンフレットの内容を厚生省が示し、市町村が印刷して配布することになっている。

 ⑥ 健康被害の生じた場合の速やかな情報収集を行う。

 保護者からだけでなく、診察した医師からの報告システムを組み、また新しいモニタリングシステムを開発して予防接種副反応の実態を調査する。予防接種を行う期間(定期の接種):1995年(平成7年)4月から実施

 定期接種の期間は、救済制度が成り立つ期間としてなるべく長く設定し、小学校入学前に未接種であることが分かった場合に、接種してやれる余裕を考慮したいというのが基本的考え方。乳幼児期に行う予防接種の後ろの期限は90月とする。しかし、接種が遅れないために、「標準的な接種時期」として勧めたい時期を示すことにした。この期間を外れた場合でも、接種が受けられるよう配慮が求められている。未接種者への指導のために乳幼児健診の機会に接種状況のチェックや教育も勧められている。