病院感染とは

 院内感染または病院感染はhospital acquired infection、 hospital infection、 nosocomial infectionと英語で呼んでいる。

 古くから知られていたが、わが国でも近年医療の進歩複雑化に伴い、すべての医療従事者が院内感染に対し深い注目と関心を払うようになってきた。

 院内感染に対応するものに市中感染community acquired infectionかおり、家庭、学校、職場など一般の社会で起こる感染を指している。

 最近は従来からあった法定伝染病や腸管感染など強毒微生物のほか、易感染性宿主(抵抗力の減弱した宿主) compromised host における日和見感染opportunistic infectionも院内感染として発生することが少なくない。院内感染をなくすためすべての医療従事者は努力すべきである。

院内感染とは

 病院内で何らかの機序で、感染・発症することを院内感染と呼んでいる。また、病院内で感染し、外来患者や医療従事者、見舞者などが自宅で発症する場合も院内感染に含んでいる。院内感染と市中感染の区別がつかないことも多いが、感染症対策は、主として入院患者や医療従事者が感染防止対策の主眼となる。

 院内感染の起こり方は、外因感染exogenous infectionと内因感染endogenous infectionとに大別され、前者は多く交差感染cross infection の形で見られる。また、ヒトからヒトヘの感染として水平感染horizontal infectionが院内感染としては大切であるが、母から子への経胎盤感染ないしは経産道感染のいわゆる垂直感染verticalinfectionも配慮する必要がある。

院内感染の及ぼす問題

 院内感染は突発的に発生することが少なくないが、万一発生すると医療上の不利益はもちろん、ときには社会的問題、さらには訴訟など法定事件に発展することもある。

 したがって、医療従事者は常にその防止に不断の努力を尽くさなければならない。

院内感染の原因となる微生物

すべての微生物が原因となる。細菌、真菌、ウイルス、原虫・寄生虫など多種多様である。強毒のものから弱毒のものにわたる。

 細菌は黄色ブドウ球菌赤痢菌、サルモネラ結核菌などが起因菌として知られていたが、医療の変化、化学療法の進歩、宿主条件の状況、院内環境などの影響から、平素無害な微生物などを始め非常に広範になってきた。例えば表皮ブドウ球菌による敗血症の増加、 MRSAによる院内感染の激増、またSerratia。wrcescens、緑膿菌とその近縁菌など、種々の嫌気性菌などが問題である。

 ウイルスは急速広範に蔓延することが多い。インフルエンザのような呼吸器感染、麻疹、風疹、単純ヘルペス、水痘、手足口病などの発疹症、ロタウイルスやA型肝炎ウイルス感染、血液を介する感染の多いB型肝炎C型肝炎成人T細胞白血病、 AIDSなどが大切である。
 
臨床微生物学的な知識の修得が望まれる。