アスペルガー症候群と自閉症の違い


自閉症との最も大きな違いは、言語と知能の発達に遅れがないことです。自閉症では、言葉の発達の遅れが必要なのに対して、アスペルガー症候群では言葉の発達の遅れが見られません。また、アスペルガー症候群では知能は正常範囲(IQ70以上)で、むしろ平均以上のことも多いですが、自閉症では、低下がみられる場合が多いです。ただし、高機能自閉症では、言葉の遅れは見られるものの、知能は正常範囲(IQ70以上)です。

アスペルガーは、このタイプの特性が、トータルな知能の優劣ではなく、質的な偏りのあるとしました。自分から作り出す「オリジナルな思考を生み出す能力」は優れていますが、知識や技術を模倣し吸収する「機械的学習」は苦手です。言語的な能力は高く、語彙は豊富で、年齢不相応なしゃべり方をしたり、学者のような難しい用語を使ったりします。表現には独自性があり、一風変わった言葉の使い方をします。独特の新しい視点から物事を見る能力や、物事の本質を見抜く観察力、経験した事実を系統的に整理し、自分なりの理論を作り上げる能力を備えています。論理的、抽象的能力においてもしばしば傑出した能力を示すのも、自閉症には見られない点です。

アスペルガー症候群では、言語性知能が動作性知能より高いのが普通であるのに対して、自閉症では、通常、動作性のほうが高いです。動作性知能は、言語を介さない、パズルを完成させるような視覚的・空間的スキルの能力です。一般には、高機能自閉症の人で、視・空間的能力が高い人が多いとされます。一目見た景色を正確に思い出して描いたり、鏡に映した逆さ文字を書いたり、読んだりできるのも、そのためです。アスペルガー症候群では、視・空間的能力が言語能力に比べて強い傾向にあります。知能は非常に優れているのに、咄嗟に左右がわからなかったりします。また、文字を書くのも苦手な人が少なくありません。

ただ、自閉症は視覚優位であり、アスペルガー症候群は言語優位であるという定式化は、必ずしも成り立ちません。最近は、視覚処理に異常に高い能力を持つアスペルガー症候群の人が増えているそうです。日ごろから、マンガやアニメ、ゲームなどに触れる機会が多い人では、視覚的処理能力が、言語的能力よりも優れているというケースも多いそうです。

コンピューターのコンセプトの原型となったチューリング・マシーンで知られる数学者のアラン・チューニングは、幼いころから数学に興味を持ち、才能の片りんを見せましたが、左右の違いがなかなか分からなかったといいます。また、書字も下手くそで、教師は「これまで見た生徒の中で一番読みにくい」と嘆いたといいます。英語やラテン語の成績はクラスで最下位で、大学に進むための奨学金の選考にも落ちるという憂き目にあっています。

アスペルガー症候群では、読み、書き、計算といった学習自体ンは問題がなく、学校時代、成績は優秀だったというケースも少なくありません。ただし、注意力や柔軟性の乏しさのため、能力が発揮できず、成績がふるわないという場合もおいです。それに対して、自閉症では、学習障害を伴うのが普通で、読み、書き、計算などの習得にかなり苦労します。

自閉症の場合は、反応の乏しさや言葉の遅れから、比較的早く、親が症状に気づくことが多いです。しかし、知能や言語的発達にも、目立った遅れがみられないアスペルガー症候群の場合、早くても2歳ごろまでは問題に気づかれにくい。自閉症でも、ときには、5、6歳まで、全く正常な発達を遂げ、そこから抗体が起きることもあります。アスペルガー症候群の場合、全く正常であることもあれば、やや遅れていることもありますが、その程度は軽度で、2、3歳で取り戻していきます。