民間金融機関、診療報酬権担保、PFI、直接金融方式

 企業は「社債」という形で市場から資金を調達できるが、病院は債券を発行することができない。そこで医療機関の資金調達法といえば、銀行などからの融資か、厚労省所管の社会福祉事業団や医療事業団からの融資しか正規調達ルートがなかった。

 特定医療法人「カレスサッポロ」(札幌市)は、05年3月、2病院を継承するのに伴い、同院の土地、建物を取得するための資金を病院債発行によって調達した。厚労省が04年10月にまとめた病院債発行(厚労省文書の中では医療機関債)のガイドラインに沿った形での起債で、これは全国で初めての試みだった。

 一部金融機関に銀行は不要なのかという不安がよぎったらしいが、カレスサッポロの病院債発行を全額引き受けたのは三井住友銀行で、依然、病院への融資の中心にいるのは銀行だというのが改めて確認されたのである。

 だが、それでも医療機関の資金調達法は多様化する方向性にあるのも事実である。中でももっとも期待が大きいのが、病院債を発行して資金調達するという方法だ。以下医療機関の資金調達方法を新旧織り交ぜて紹介していこう。

①民間金融機関の融資

 銀行、信金、信組などの民間金融機関は、がっての貸し渋りを経て融資は厳しくなっている。この姿勢は医療機関にとって予断を許さないが、主役の座を降りることもない。

②「診療報酬権譲渡」(レセプト譲渡)

 診療報酬権を譲渡して、「レセプト代金×2ヵ月分相当金額」に近い金額を調達するという手法である。この譲渡を毎月繰り返して行くことにより、長期的な資金調達と似た効果を挙げることができるが、債権買収側の姿勢変化や買取資金の枯渇化などへの対策が講じられていないと健全性に不安が残る。

③「診療報酬権担保」(レセプト担保)

 長期資金を調達し、その返済資金としてのレセプト代金の一部が融資会社に振り込まれる方式だ。医療機関としてはその振り込みによって長期にわたり融資を返済するもので、資金の健全性についての問題は生じない。

④PFI(Private Finance Initiative=プライペート・ファイナンス・イニシアティブ)方式

 公共施設の建築や運営に民間の資金とノウ(ウを活用しようという方式で、前述したオリックスがプロジェクトチームを組んで参加している高知医療センターがこの方式で資金調達をした。この方式では公共性が高いという評価を受ける必要がある。美容整形外科などでは恐らく適用されないだろう。

 医療機関も融資を受けられる健全なものと、銀行からソッポを向かれる不健全なものに二極分化していくだろうが、同じように自治体も裕福なところとそうでないところに分かれ、医療サービスに差が出てくる。

 PFIを事業化することで、こうした問題を解決するだけでなく、病院がいままで事業として手掛けてこなかった分野へ民間の参入を促すことにより、採算ベースに乗せることが可能になり、病院も新しい分野の開拓が可能になる。

⑤直接金融方式

 直接金融とは資金提供者が自分の判断で、特定の企業や医療機関に資金を調達するという方式である。銀行などの場合は、預金をする人は自分で判断するのではなく銀行の判断に任せているため、間接金融方式と呼ばれる。

 直接金融方式で導入した資金が資本金であるにせよ、借入金にせよ、現実の活用は容易ではない。それは日頃から接触のない資金の提供者に対して、将来の経営計画の妥当性と資金提供をするだけのメリットがあることを説明できる医療機関は少ないからだ。従来の取引銀行にさえ説明できないのであれば、外部の資金提供者を納得させることは極めて難しい問題と言えるだろう。