電子カルテ・オーダリングシステム導入のメリット

 IT技術の進展により、医療現場では患者一人ひとりの医療情報をコンピュータで管理する「電子カルテ・オーダリングシステム」の普及が進められており、大手コンピュータソフトが激しい受注合戦を繰り広げているが、実際の普及はそれほどでもない。その理由は、部分的普及にとどまっているからだ。

 レセプトにしても電子カルテにしても実情は完全IT化にはほど遠いのが現実だ。しかも、現在、治療、診療行為、カルテ、看護記録、検査、画像診断、診療報酬請求、物流管理などのシステムは、専門職領域の違いから、それぞれ個々独立したIT構築状況にある。

 大まかに言って電子カルテは医師、看護師の領域であり、レセプトは医療事務の領域だ。これでは入力工程・業務が重複してしまいムリ、ムラ、ムダを招き、質を落とさないスリム化、費用対効果など本当の経営効率化につながらない。

 これからの時代に、経営効率化の重要ポイントとなるのは、ITを駆使した「電子カルテ・オーダリングシステム」の構築である。

 このシステムは、患者の個人医療情報、治療方法、カルテ(診療記録)、看護記録(クリティカル・パス)、検査、画像診断、診療報酬請求、物流管理などの情報データを、現場(病棟、手術室、薬剤管理室など)で、発生源入力する仕組みにすることである。

 そうすれば、これらの情報データは、リアルタイムに公開することができ、それぞれの現場が必要なときにはいつでも活用することができる。

 また、共有のネットワーク化を図れば、他の現場が他の現場の情報を引き出すこともできるようになる。

 こうして「ヒト・モノ・カネ・情報」の一元管理体制ができあがり、病院経営は限りなく、企業経営に近づくことができるのである。

 だが、現状のITを駆使した「電子カルテーオーダリングシステム」による物流一元管理体制(ヒト・モノ・カネ・情報)のあり方は、物流管理(医療情報)システムと保険請求システムが切り離されており、このため業務工程の削減が課題になっている。

 現在の物流管理システムでは、各部門の使用量(医療材料)分データは、用度課に物品依頼され、物流独自のバーコード体系によってコンピュータ入力される。

 そして、各卸業者(医薬品卸、医療材料卸など)に発注された物品は各卸業者によって、保管棚に納品される。保険請求システムでは、各部門(病棟、手術室など)の医師、看護師により、診療、治療に必要な物品は保管棚から取り出されて患者の治療に使用後、処置、手術伝票に事後記載処理される。

 事後記載された処置・手術伝票の情報データは、保険請求独自のバーコード体系を基に医事課で再入力され、患者に保険請求されるというのがもっとも多い流れだ。

 現在ITを導入した多くの医療機関で行われている、この二元管理システム(物流管理システムと保険請求システム)を、ITを駆使した「電子カルテ・オーダリングシステム」にすると、用度課・医事課で再入力するのではなく、現場で直接発生源入力することで、システムに組み入れて一元管理(物流と保険請求の統一した一連物品バーコード体系)することができるので、業務工程は大幅に削減される。発生源入力された物品情報データは、物流業者・メー力ーにもリアルタイムで提供(公開・共有のネットワーク化)され、その情報データを基に、現場に物品を自動補充(物品依頼、発注伝票なし)する仕組みにする。こうすれば医療機関側は、物品依頼、発注依頼なしに補充時の物品チェックだけで済むために、費用削減効果が生まれる。

 一方、保険請求システム(現場で発生源入力された共有情報データ)は、医事課とリアルタイム(タイムラグ=課題となっていた時間的ズレを解消)に連動し、患者請求・診療報酬明細書にも反映されて、審査機関に提供できる仕組みになる。

 この仕組みの特徴は、重複する物流業務(伝票がないシステム管理体制方式=物流管理コストの削減)と保険請求業務(再入力削減・患者にリアルタイム請求)の一元管理体制にある。

 その結果、リアルタイムで情報データが提供できるとともに、業務工程短縮=人件費削減などのメリットも生まれて、費用削減の相乗効果は大きい。

 「現実問題として、一元管理化していく場合には、数多くの問題・問題点に遭遇するものです。できるところから実施していくことが大切でしょう」(大手ソフト・SE)

 「電子カルテ・オーダリングシステム」は、費用がネックだ。というのもこうしたことに不慣れな医療機関側経営者や担当責任者は、アウトソーシング企業に丸投げ(全面的お任せ)してしまうことが多く、このため、見積もりとは違うベラボーな請求となって返ってくることがある。細部にわたってはまだ問題点は多い。