メディカル給食業界で寡占化が進む理由

 病院から給食業務を委託された場合、メニュー作成から実際の調理まですべて担当する場合と、部分委託される場合がある。前者の場合は病院側の管理栄養士がメニューを提出し、委託されている業者はそのメニューに沿ってメディカル給食を提供する。

 業者側にとってはメニュー作成の権利が医療機関側にあると採算管理が難しくなり、できるだけ業者としてはメニューの作成段階から任せてもらいたいのが望みだ。

 メディカル給食は粗利か低いと言われる。採算や規制の問題を考えると病院・老人福祉給食は新規参入が難しいというのも定説化している。

 中には、せっかくメディカル給食に参入したが、採算が取れないため途中で止めるところもあると言われる。その理由は、大手から中小までほとんどが弁当業務や一般事業所給食と兼業し、採算が合わなくてもメディカル給食の場合、途中で放り出すことができないからだ。メディカル給食協会に加盟している上位20社だけで市場占有率は70%を超えており、構造的には中小業者が多く、中小がメディカル給食を止める場合には、大手に「OO病院の営業権を買って欲しい」という申し出をすることが多い。そのため、ますます寡占化傾向にある。

 また、一般事業所給食と病院食では勤務体系がまったく違う。メディカル給食では1日3食を作らなければならない。盆休みや正月休みも入院患者がいる以上休むことはできない。そこが一般事業所給食とメディカル給食の違いだ。

 医療改革では、メディカル給食の自己負担額が引き上げられる方向にある。現在医療機関の標準的給食の自己負担は780円。なぜこの価格かというと、「在宅で療養している人は食事代を自分で負担しているのだから、入院患者については、。材料費”くらいは本人が負担すべきだ」という主旨に則ったものだ。

 しかし、病院給食の場合、材料費については確かに自己負担だが、人件費など作り手の費用は公的保険で賄われている。一方、在宅で療養している人は、作り手の費用を保険でカバーしてもらっているわけではない。だから病院給食でも作り手の費用まで含めて全額自己負担すべきだという論調は、メディカル給食だけでなく、自己負担増がキツイと思われる老人福祉施設まで広がりを見せそうだ。

 こうした負担増によって、価格の値下げ圧力がかかり、給食業者に逆風かといえばそうでもなく、むしろビジネスチャンスと捉えている。メディカル給食の自己負担分か増えれば、「じやあ、もっとお金を出してもよいから豪華な食事を!」という要求が出てくることが予想されるからだ。