無症候性血尿


 血尿だけがみられる場合(蛋白尿もなく腎機能も正常)、泌尿器科的な検査を一通り受けておかれたほうかよいでしょう。尿路のレントゲン検査、超音波検査、膀胱鏡などの内視鏡検査、さらに場合によっては腎血管造影などで異常がなければ、まず、心配ありません。

 ある統計によりますと、無症候性血尿患者の75%程度に腎生検によって何らかの糸球体の病変が認められ、その50%程度が電A腎症であったとされています。しかし、血尿単独の糸球体疾患(IgA腎症など)は予後良好ですので、腎生検で診断がついても、特別な治療を考えたり、生活様式を変える必要もありませんので、あえて腎生検を施行する必要はないと考えます
 小児では正常でも尿沈渣(尿10㎡を毎分1500回転で10分間遠心して生じた沈澱部分)を400倍の倍率で顕微鏡で見たときに、一視野に5個までの赤血球が見えます。この尿中の赤血球が増え、しかし肉眼的には血尿となっていることがわからない状態を無症候性血尿と呼びます。実際には400倍にて一視野あたり5~30個程度の赤血球がみられる状態を指します。

 学校検尿にて異常と指摘される者のうち最も頻度が高いのがこれです。

 血尿の原因は腎炎により腎糸球体から生じている場合、腎の血行動態の異常により腎の血管から生じている場合、その他などに分けられます。腎糸球体由来の赤血球は80%以上が変型しているのに対し、それ以外の理由でみられる血尿の赤血球は20%以下しか変型していないことにより、両者を区別することができます。

 一般に、腎糸球体由来の血尿の場合にはこの程度の血尿のみで蛋白尿のない場合には、腎生検にても巣状分節状という軽い糸球休の増殖性病変しかみられないことがほとんどです。半数近くの患者の家族に同様の血尿陽性者がみられます。経過観察してゆくと3割の者は消失し、7割の人はほとんど不変であることより、予後は良好と考えられており、現在では腎生検をすることはほとんどありません。ただし、一部の者は進行性の遺伝性腎炎や垣A腎症の初期のことがあるため、定期的な経過観察が必要です。

 糸球体以外の由来と考えられる血尿の場合、やはり予後は良好のことが多いのですが、一部でウイルムス腫傷(小児の腎癌)のことがあるため、腎エコーなどの画像診断によりその可能性を否定しておかねばなりません。いずれにせよ特殊な場合を除いては小児の無症候性血尿の予後は一般に良好で、特別の治療法はなく定期的に経過を観察すればよいでしょう。運動や食餌の制限も不要です。