次世代の依存症治療薬

回復期の依存症者の渇望を弱めるのに実際に役立つ治療薬が現れてきたのは、ここ数年のことです。ナルトレキソン(商品名レビア)はその一つで、禁酒中のアルコール依存症者の渇望を大きく弱めると考えられています。認知行動療法と組み合わせて処方すると、再発率はさらに大きく低下します。ナルトレキソンはμタイプのオピオイド受容体のアンタゴニストで、内因性オピオイドの信号伝達に直接作用し、またドーパミン系の信号伝達にも間接的に作用します。依存症患者はナルトレキソンの錠剤服用を止めてしまうことが多いですが月に1回の注射で済むナルトレキソンの徐放性製剤(商品名ビビトロール)で改善できます。ナルトレキソンはヘロイン依存症者の再発防止にもある程度の効果が認められています。

ニコチン依存症の治療では、2種類の薬が米国で認可されています。ププロピオン(商品名ウェルブトリン、ジバン)はドーパミン再取り込阻害薬です。バレニクリン(商品名チャンティックス、チャンピックスス)は脳内のある種のニコチン受容体の活性化を抑制します。両方とも禁煙中のニコチン依存症者のニコチンへの渇望を軽減し、再喫煙率を有意に減少させることが報告されています(バレニクリンのほうがやや効果が高いようです)。残念なことに、両方とも危険な副作用があります。特に注意すべきは自殺を考える人が増えることで、処方の際には精神科医の直接の監督を必要とします。快感回路を標的にする治療薬では、気分の変化が問題になることが多いです。その一例が食欲抑制薬リモナバンンで、自殺のリスクが高まるとして最近ヨーロッパの大半の国で処方が禁止されました。

ニコチンやアルコール、ヘロインといった、鎮静、麻酔作用を持つ薬への渇望を抑える効果のある治療薬が出現し始めている一方、コカインやアンフェタミンなど、興奮性の薬物を止めようとする努力を支える薬はほとんど存在しません。現在、数多くの依存症治療薬が様々な開発段階にあることは心強いです。開発中の新薬の一部は、ドーパミンオピオイドやエンドカンナビノイドといった快感の生化学システムの中心的な部分を少し違った方面から狙おうとしています。しかし、まったく新しい興味深い方向に向かっている新薬もあります。