多発性骨髄腫の治療:MP療法、M2プロトコール、CP療法、メルファラン超大量療法

 多発性骨髄腫の治療は,他の悪性血液疾患と同様化学療法が中心になる。疼痛を伴うときは鎮痛剤を併用したり,局所放射線療法を行い,合併症が生じたときは各々の合併症に対する治療が必要になる。

1.アルキル化剤

 多発性骨髄腫の化学療法にはアルキル化剤が主に用いられる。アルキル化剤の抗腫瘍活性は,腫瘍細胞のDNA鎖に結合し, DNAの複製と転写を阻害することで発現されると言われている。アルキル化剤のなかでもメルファラン(アルケラン)は,奏効率の上昇と生存期間の延長をもたらした最初の薬剤であり,その後多数の薬剤が導入されたにも拘らず,これを凌駕するものはまだなく,現在でも化学療法の中心に据えられている。少量持続療法と大量間歇療法があるが,後者が現在主流であり,これを含んだ様々な多剤併用療法が考案されている。

 a) MP療法

 多発性骨髄腫の代表的治療法である。メルファラン0.15mg/kgとプレドニソロン(プレドニン) 2mg/kgを4日間経口投与し,6週毎に繰り返す。奏効率は40~60%,完全寛解率はO~6%である。生存期間は未治療例6~10ヵ月に対し,20~30ヵ月に延長するlt

 b) CP療法

 シクロホスファミド(エンドキサンR) lg/㎡をday 1に静注にプレドニソロン100~200㎎/日をday 1~4に経口投与し,3週毎に繰り返す。メルファラン耐性例に対しても有効であったことが報告されている。

 c) M2プロトコール

1,静注)とプレドニソロン(1mg/kg, day 1 ~7, 0. 5mg/kg, day 8~14,経口)を併用した5剤併用療法で,未治療例における奏効率87%,平均生存期間40ヵ月の優れた成績が得られている。わが国ではBCNUが発売されておらず,変わりに, ACNU (ニドラン) (50mg /日)が用いられる。アルキル化剤を併用するのは,アルキル化剤相互に交差耐性がないことに根拠を置いている。

 d)メルファラン超大量療法

 メルファラン140mg/㎡を点滴(わが国では未発売)投与するもので,未治療例の27%,治療抵抗例の13%に完全寛解か得られたことが報告されている。

 e)副作用

 アルキル化剤は,血液系,消化器系の副作用を共通して有している。血液障害は白血球減少と血小板減少が主であり,消化器系の副作用として嘔気・嘔吐,食欲不振がしばしばみられる。特殊なものとしてシクロホスファミドの出血性膀胱炎がある。