前立腺癌の治療:去勢術、LH-RHアナログ(ソラデックス、リュープリン)など

 前立腺癌は高齢者に多く性ホルモン依存癌である。初期は無症状で、通常排尿困難や腰痛で発見されるので前立腺癌も半数以上が病期C以上の進行癌である。治療法は手術、放射線、ホルモン、化学療法の単独あるいは併用など年齢、合併症、病期、分化度などにより選択される。表3に病期分類と表4に病期別の治療法を示す。病期A1は一般に進行が遅いので、無治療で厳重に経過を観察する。病期A 2、 B、 Cはstaging operation により骨盤リンパ節転移の有無を確認し、病期A 2、 Bについては根治療法として前立腺全摘あるいは放射線治療を行う。病期C、 D 1については根治療法の適応となるか否か議論の余地があり、ホルモン療法の併用などが試みられている。病期D2はホルモン療法を第1選択とした集学的治療の対象となる。

ホルモン療法

ホルモン療法は血中アンドr=・ゲソの除去あるいはアンドロゲン受容体の阻害である。前者には去勢術やLH-RHアナログ、エストロゲン剤、後者には抗アンドロゲン剤がある。

 ①去勢術:去勢により血中テストステロンは1 mg/ml以下に低下し、前立腺癌細胞のうちアンドロゲン依存細胞は退縮壊死に至る。

 ②LH-RHアナログ:生理的に視床下部から分泌されるLH-RHのアナログである。連続投与により下垂体のLH一RH受容体の感受性は鈍化、その結果下垂体からLHの分泌は減少し、血中テストステロン値は去勢域まで低下する。副作用として、投与初期のLH分泌過剰による一過性のテストステロン値の上昇がある。

 現在4週間毎の注射ですむ徐放性の酢酸ゴセレリン(ソラデックス(EI)、酢酸リュープロレリン(リュープリン)が発売されている。

 ③エストロゲン剤:エストロゲンの作用の中心は視床下部・下垂体系からのゴナドトロピン分泌を抑制し、血中テストステロンを低下させる点にある。心血管障害、肝障害などの副作用に注意する。経口剤、注射剤として二燐酸ジエチルスチルダストロール(ホンパン)、経口剤としてエチュールエストラダイオール(プロセキソール)がある。

 ④抗アンドロゲン剤:前立腺癌細胞のアンドロゲン受容体の阻害剤である。ステロイド剤として酢酸クロルマジノン(プロスタール)があり、これはレセプター結合阻害以外に直接的前立腺作用がある。非ステロイド性抗アンドロゲン剤としてフルタマイドがある。

         ホルモン抵抗癌の集学的治療

 初回治療としてのホルモン療法は多くの症例で著効を示すが、その有効期間に限界があり数年後にはホルモンは無効となり再燃し、その後の経過は極めて不良である。これら再燃癌に対して化学療法が試みられている。有効性が認められる薬剤はサイクロフォスファマイド(エンドキサン)、アイフォスファマイド(イフォマイド)、シスプラチン(ランダ、ブリプラチン)硫酸ペプロマイシソ(ペプレオR)、 UFTRであるが、いずれも効果は低い。

 多剤併用化学療法も種々試みられているが、まだ有効なものはない。原発巣に対する動注化学療法あるいはそれと放射線の併用は有効で、適応を選べば有用な治療法である。