骨悪性腫瘍治療の主薬:メソトレキセート(MTX)、アドリアマイシン(ADR)、シスプラチン(CDDP)が主薬

a. CDDP (Cis-diamine-dichloroplatinum、 Cisplatin、シスプラチン)

  商品名:ブリプラチン(ブリストルマイヤーズ)、ランダ(日本化薬

 プラチナの誘導体で、 2.5~3.0111g/ kg または100mg/㎡の動脈内あるいは静脈内に投与する。投与時に強い悪心、嘔吐などの胃腸症状が起こるが、種々な制吐剤(プリン一ニラン、カイトリルなど)により軽減することができる。その他の副作用として注意が必要なものは腎障害と聴力障害である。腎障害は一般に一過性で回復可能であるが、十分な利尿をはかることが重要である。聴力障害は高音域難聴が起こり易いので聴力検査を行いチェックする。これは一般に非可逆的であるが、程度の軽いものでは日常会話域に障害が及ぶことはない。

b. MTX (Methotrexate、 Amethopterin、メソトレキセート)

  商品名:メソトレキセート(日本レダリー)

 代謝拮抗剤であり、原則的には小量持続投与が行われるが、骨悪性腫瘍に対してはHDMTX療法といって超大量の一時投与法を行う。

 HDMTX療法:100~300s/kg(50kgの体重の人には5~15g投与する。市販剤型は50mgと200mgであるので、 15 g投与の際には50mgだと300本、200mgを使用しても75本を一時に投与することになる)を静脈内に投与するが、この量は致死量であるのでcitrovolum factor (ロイコボリソ)によるレスキュー療法を行う必要がある。

 通常MTX投与開始の12時間後よりロイコボリン投与を開始する。 MTXの血中濃度をチェックし、安全域まで低下したことを確認する。投与時に悪心、嘔吐など強い胃腸症状が起こるが、この薬剤の重篤な副作用は腎障害である。尿量のチェック、尿のアルカリ化に注意する。尿のコントコ-ルが不十分だと薬剤の排泄がおくれ強い腎障害のため透析療法が必要になったり、更に危険な状態に陥ることもある。十分な経験をつんだ医師の指導の下で行われるべき治療法である。

c. ADR (Adriamycin、 Duxorubicin、アドリアマイシン)

  商品名:アドリアシン(協和醗酵)

 イタリアのアドリア海沿岸で発見された放線菌より分離された抗癌抗生物質である。広く骨・軟部悪性腫瘍の治療に用いられる。投与量は20~30mg/㎡/日を2日間または0.8~1. Omg/kg/日を2日間、通常静脈内に投与する。注射時血管外に漏出すると、局所皮膚の壊死を来すので十分に注意する。投与時に悪心、嘔吐、食欲不振などの胃腸症状を来す。骨髄機能抑制が強く、しばしばこれが投与制限因子となる。しかし近年G-CSF {顆粒球コロニー刺激因子)を使用することにより、この副作用の軽減が期待される・そのほか肝機能障害も起こるが、この薬剤のもうひとつの重篤な副作用は心筋障害である。投与前後の心電図をチェックすることが重要である。なおこの副作用発現頻度は総投与量により高まるため、通常500mg/㎡を投与量の上限と考えている。なお脱毛はほとんど100%の症例に認められるが、これは可逆的である。