有棘細胞癌の病期別治療指針


 皮膚悪性腫瘍の中、悪性黒色腫と並んで生命に危険を与える腫瘍であるが、進行は比較的ゆるやかで、初期の治療に失敗してもやり直しが可能であるということで比較的予後は良好である。しかし、一度臓器に転移が発生すると予後は否定的である。表皮の有棘細胞より発生するもので多くの誘因が存在する。例えば、放射線障害、熱傷や外傷の瘢痕、慢性炎症、皮膚結核、紫外線、化学物質などである。化学療法剤として始めbleomycinが認可されたが、やがてpepleomycinに変わり現在の主要な抗癌剤となっている。原発巣に適用され70%近い奏効率を誇っているが、進行期になると感受性が低下する。従って進行期には、 pepleomycinとmitomycin Cの併用、あるいはCAV療法(後述)などがある。 しかし、悪性黒色腫と同様、病期別により治療指針が定まっている。

            病期別治療指針

 1.病期Iの治療

 腫瘍の長径が2cm以下のもので、この病期では外科療法のみで十分である。化学療法を適用することはない。

 2.病期Ⅱの治療

 腫瘍の長径が2cm以上のものである。従って、もし、その腫瘍が切除困難な程、大きいとすると化学療法を施行して縮小せしめ、外科療法を容易ならしめるために適用する。 pepleomycin (PEP)が第1選択である。また、その術前術後の併用は予後を良好ならしめると考えられている。放射線の適用もしばしば行われる。予後は比較的良好で5年生存率は90%前後である。

 3.病期Ⅲの治療

 この病期は2つに大別される。 1つは腫瘍細胞の軟骨、骨、筋肉への浸潤であり、1つは所属リンパ節転移である。何れにせよ、化学療法と外科療法の併用が必要である。5年生存率は約60%である。

 4.病期Ⅳの治療

 病期ⅣになるとPEPの効果は低下する。特にPEPの既治療例ではほとんど感受性は観察されない。 PEP とmitomyin C (MMC)との併用も、しばしば適用されるが、必ずしも有効ではなく、進行期にはCAV療法(cisplatin、 adriamycin、 vindesine)が適用される。 リンパ節、肺転移に有効の報告がある。有棘細胞癌は放射線にも感受性が高いことより転移の部位によっては有力な治療法である。この他、最近、開発されたCPT-11 (Camptothecin誘導体)も進行期にかなりの効果が認められている。